非公開Wi-Fiはつながりやすいとビッグデータで判明
中国の研究者が、なぜWi-Fiの接続に非常に長い時間がかかるのかの原因を解明した。 by Emerging Technology from the arXiv2017.01.23
Wi-Fiは21世紀における偉大な解放者だ。いろいろな場所でインターネットに無線で接続できるので、あらゆるフレキシブルな勤務形態を実現するテクノロジーといっていい。実際、Wi-Fiは喫茶店を生産的な仕事場に変えてしまった。
しかし、いつもWi-Fiを使っているユーザーなら誰でも面倒な問題があることに気付いている。Wi-Fi接続に時間がかかることがあり、まったく接続できないこともある。単純に使えない場合が頻繁にあるのはWi-Fiの恐ろしい事実だ。
ここから重要な疑問が沸いてくる。なぜか? 最新の無線ネットワークと接続機器が頻繁に失敗する理由は何なのだろう?
1月20日、中国の清華大学の裴昶華(ペイ・チャンファ)研究員のチームが4億回のWi-Fiセッションの接続時間を計測した実験により答えがわかった。研究チームはデータを分析し、典型的な失敗原因と回避方法を解明したのだ。
研究チームはアンドロイド・アプリ「Wi-Fi Manager」(Wi-Fiアクセス・ポイントの接続時の手続きについて、各段階の所要時間を記録するアプリ)でデータを収集した。
Wi-Fiでは、毎回、いくつかの手続きを経て接続を確立している。モバイル装置はまず、利用可能なWi-Fiアクセス・ポイントの電波をスキャンする。接続先のアクセス・ポイントを決めたら、装置とアクセス・ポイント間でデータパケットを交換する。その後の認証段階では、必要ならパスワード入力が求められる。最後の段階ではDHCP(動的ホスト構成プロトコル)により、装置にIPアドレスが割り当てられる。
(Wi-Fi接続の確立後、スターバックスや空港等の無料アクセス・ポイントでは、ユーザーが別のパスワードの入力を求めるゲートウェイページに転送される場合があるが、研究チームはこの段階を計算に含めていない)
研究チームが取り組んだ問題は、接続成功時、接続プロセスでの一般的な所要時間だ。研究によって判明したのは、Wi-Fiユーザーには既知の事実だ。研究チームは、Wi-Fi接続は45%の確率で失敗するという驚くべき事実を明らかにした。また、接続までの所要時間には非常にむらがあり、接続の15%で5秒以上かかった。
では何のせいで上手くいかないのだろうか? 研究チームは、接続失敗と接続までの所要時間の長さに関連する要因を探り当てるため、データマイニング・アルゴリズムを使った。
その結果、いくつかの要因が接続までの所要時間と接続の成功率に著しく関係していることが判明した。最も重要な成功要因は、Wi-Fiネットワークが公開か非公開かだ。非公開ネットワークは公開ネットワークよりかなり高速で、接続成功率も高いことがわかった。
モバイル装置のOSも、別の要因だ。研究チームによれば、同じモバイル機器でも実行するOSが違えば接続の所要時間に相当な差が出る場合があるという。研究チームは特にFlyMe(中国メーカーによるアンドロイドの大幅カスタマイズバージョン)を名指しして遅さの原因だとした。また、無線LAN用の半導体チップには接続確立まで時間がかかる製品があり、モバイル機器とアクセス・ポイント双方のチップセットも、接続時間に影響する。
接続が遅くなる要因がわかったので、研究チームは、ほとんどの失敗を回避して接続時間を最適化するアルゴリズムを作成した。
最適化アルゴリズムは、たとえば、アクセス・ポイントが公開か非公開かを調べて、公開アクセス・ポイントを無視し、最も信号レベルが強い非公開ネットワークを選択する。
この手法は接続までの所要時間を著しく改善する、と研究チームはいう。アルゴリズムを使った場合、接続失敗率はたった3.6%に減り、接続所用時間は10分の1になる。
素晴らしい成果だ。喫茶店で仕事中の世界中の人に賞賛されるだろう。
参照:arxiv.org/abs/1701.02528: Wi-Fiアクセス・ポイントへの接続に非常に長い時間がかかるのはなぜか
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