KADOKAWA Technology Review
×
【3/14東京開催】若手研究者のキャリアを語り合う無料イベント 参加者募集中
Data Mining Solves the Mystery of Your Slow Wi-Fi Connection

非公開Wi-Fiはつながりやすいとビッグデータで判明

中国の研究者が、なぜWi-Fiの接続に非常に長い時間がかかるのかの原因を解明した。 by Emerging Technology from the arXiv2017.01.23

Wi-Fiは21世紀における偉大な解放者だ。いろいろな場所でインターネットに無線で接続できるので、あらゆるフレキシブルな勤務形態を実現するテクノロジーといっていい。実際、Wi-Fiは喫茶店を生産的な仕事場に変えてしまった。

しかし、いつもWi-Fiを使っているユーザーなら誰でも面倒な問題があることに気付いている。Wi-Fi接続に時間がかかることがあり、まったく接続できないこともある。単純に使えない場合が頻繁にあるのはWi-Fiの恐ろしい事実だ。

ここから重要な疑問が沸いてくる。なぜか? 最新の無線ネットワークと接続機器が頻繁に失敗する理由は何なのだろう?

1月20日、中国の清華大学の裴昶華(ペイ・チャンファ)研究員のチームが4億回のWi-Fiセッションの接続時間を計測した実験により答えがわかった。研究チームはデータを分析し、典型的な失敗原因と回避方法を解明したのだ。

研究チームはアンドロイド・アプリ「Wi-Fi Manager」(Wi-Fiアクセス・ポイントの接続時の手続きについて、各段階の所要時間を記録するアプリ)でデータを収集した。

Wi-Fiでは、毎回、いくつかの手続きを経て接続を確立している。モバイル装置はまず、利用可能なWi-Fiアクセス・ポイントの電波をスキャンする。接続先のアクセス・ポイントを決めたら、装置とアクセス・ポイント間でデータパケットを交換する。その後の認証段階では、必要ならパスワード入力が求められる。最後の段階ではDHCP(動的ホスト構成プロトコル)により、装置にIPアドレスが割り当てられる。
(Wi-Fi接続の確立後、スターバックスや空港等の無料アクセス・ポイントでは、ユーザーが別のパスワードの入力を求めるゲートウェイページに転送される場合があるが、研究チームはこの段階を計算に含めていない)

研究チームが取り組んだ問題は、接続成功時、接続プロセスでの一般的な所要時間だ。研究によって判明したのは、Wi-Fiユーザーには既知の事実だ。研究チームは、Wi-Fi接続は45%の確率で失敗するという驚くべき事実を明らかにした。また、接続までの所要時間には非常にむらがあり、接続の15%で5秒以上かかった。

では何のせいで上手くいかないのだろうか?  研究チームは、接続失敗と接続までの所要時間の長さに関連する要因を探り当てるため、データマイニング・アルゴリズムを使った。

その結果、いくつかの要因が接続までの所要時間と接続の成功率に著しく関係していることが判明した。最も重要な成功要因は、Wi-Fiネットワークが公開か非公開かだ。非公開ネットワークは公開ネットワークよりかなり高速で、接続成功率も高いことがわかった。

モバイル装置のOSも、別の要因だ。研究チームによれば、同じモバイル機器でも実行するOSが違えば接続の所要時間に相当な差が出る場合があるという。研究チームは特にFlyMe(中国メーカーによるアンドロイドの大幅カスタマイズバージョン)を名指しして遅さの原因だとした。また、無線LAN用の半導体チップには接続確立まで時間がかかる製品があり、モバイル機器とアクセス・ポイント双方のチップセットも、接続時間に影響する。

接続が遅くなる要因がわかったので、研究チームは、ほとんどの失敗を回避して接続時間を最適化するアルゴリズムを作成した。

最適化アルゴリズムは、たとえば、アクセス・ポイントが公開か非公開かを調べて、公開アクセス・ポイントを無視し、最も信号レベルが強い非公開ネットワークを選択する。

この手法は接続までの所要時間を著しく改善する、と研究チームはいう。アルゴリズムを使った場合、接続失敗率はたった3.6%に減り、接続所用時間は10分の1になる。

素晴らしい成果だ。喫茶店で仕事中の世界中の人に賞賛されるだろう。

参照:arxiv.org/abs/1701.02528: Wi-Fiアクセス・ポイントへの接続に非常に長い時間がかかるのはなぜか

人気の記事ランキング
  1. AI crawler wars threaten to make the web more closed for everyone 失われるWebの多様性——AIクローラー戦争が始まった
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 好評につき第2弾!研究者のキャリアを考える無料イベント【3/14】
  3. From COBOL to chaos: Elon Musk, DOGE, and the Evil Housekeeper Problem 米「DOGE暴走」、政府システムの脆弱性浮き彫りに
  4. What a major battery fire means for the future of energy storage 米大規模バッテリー火災、高まる安全性への懸念
  5. A new Microsoft chip could lead to more stable quantum computers マイクロソフト、初の「トポロジカル量子チップ」 安定性に強み
エマージングテクノロジー フロム アーカイブ [Emerging Technology from the arXiv]米国版 寄稿者
Emerging Technology from the arXivは、最新の研究成果とPhysics arXivプリプリントサーバーに掲載されるテクノロジーを取り上げるコーネル大学図書館のサービスです。Physics arXiv Blogの一部として提供されています。 メールアドレス:KentuckyFC@arxivblog.com RSSフィード:Physics arXiv Blog RSS Feed
▼Promotion
U35イノベーターと考える 研究者のキャリア戦略 vol.2
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る