FDAの動物の遺伝子組み換え規制案に科学者が反発
生命の再定義

FDA Mulls Tighter Regulation of Gene-Edited Animals FDAの動物の遺伝子組み換え規制案に科学者が反発

FDAが提案した全ての動物ゲノムの編集を新薬と同じように扱う新規制について、科学の進歩を遅らせると批判する声が上がっている。 by Jamie Condliffe2017.01.23

新たに提案された米国食品医薬品局(FDA)の規制が施行されると、米国中の研究機関は動物のゲノムを編集する研究を続けにくくなるかもしれない。

動物の遺伝子編集(MIT Technology Reviewは2014年に世界を変えるテクノロジー10のひとつに選んだ)は、世界中の研究機関で研究が進んでいる。研究者は「CRISPR-Cas9」の手法により、筋ジストロフィーのマウスを治癒したり、筋肉量を増やしたビーグル犬を繁殖させたり、牧畜業の安全性を高めるために角のない牛を作ったりしている。

しかしFDAが新たに提案した規制によって、研究科学者は実験がしにくくなるかもしれない。新しいガイダンスは、将来「動物のゲノム(全遺伝子情報)について個々の遺伝子を変更することは、新動物医薬品認可要件に照らして、個別の新動物医薬品案件とみなされると示した。そうなればFDAは現在の医薬品を扱う方法と同様の過程で、全ての意図的に遺伝子編集された動物の安全性を検査しなければならなくなる。

FDAの新規制が施行されれば「ヒツジ(遺伝子組み換えでない)」な動物が長く残ることになる

ネイチャー誌の記事によれば、一部の研究者は研究活動にとって過度の負担になるため、提案に異議を唱えている。一方で規制が施行されても、大きな資金と人員、設備が揃った民間企業等は独自の商業研究を進められるし、米国とは異なる規制の枠組みがある他国の研究者は影響を受けない。ある科学者はネイチャー誌に、新規制は米国の「イノベーションに対する妨害」だと述べた。

もちろん、規制の背景には遺伝子組み換え作物へ社会全体の不安があり、動物での同様の研究に強い反発があることも事実だ。FDAはアメリカの研究室で作成された全ての遺伝子編集動物をひとつひとつ確認することで論争を避けようとしているのかもしれない。

ただし、現段階では提案されただけのガイドラインだ。トランプ政権の始動により、規制案は、廃止から厳格化まで、まったく異なる提案になることも考えられる。

(関連記事:Nature,  “10 Breakthrough Technologies: Gene Editing,” “Everything You Need to Know About CRISPR Gene Editing’s Monster Year,” “First Gene-Edited Dogs Reported in China”)