もし選挙そのものがテクノロジーだとしたら、その機械は大きく不規則に広がる可動パーツでできており、それらはほとんどの人が認識している以上の働きをしている。システムには通常、問題がたくさんある。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックにおいて物事が極めて予測困難になったことで、機械全体のうちの1つのパーツがうまく機能するかしないかが、選挙全体にとてつもなく大きな影響を与える可能性が出てきた。
ウィスコンシン州の郵便問題について考えてみよう。
ウィスコンシン州は、ドナルド・トランプ大統領が2期目の当選を果たそうとするのなら、おそらく勝たなければならない州だ。2016年、同州に10ある選挙人団の票は僅かな差でトランプ大統領に向かった。約400万の有権者人口のうち、わずか2万2748票の差だった。バラク・オバマは2012年、約20万票でウィスコンシン州を勝ち取った。同州は2020年の重要な激戦州であり、失った場合の代償は大きい。
米国の他の州と同様に、今回のパンデミックによって、ウィスコンシン州では史上最多の有権者が郵便で票を投じている。しかし、同州にはもうひとつ取り組むべき深刻な問題がある。郵便配達の速度が急激に落ちているのだ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、9月に、普通郵便にあたる第一種郵便の手紙が州内で配達されるのには10日かかった。全米で郵便配達にかかる時間が延びているのは事実だ。この問題は、共和党の献金活動をしている人物でもあるルイス・デジョイが、郵政公社総裁となって大改革を展開した後に始まった。だが、ウィスコンシン州での郵便配達の遅延は、郵政に関する米国の最も大きな失策のひとつだと言える。
「米選挙プロジェクト(US Election Project)」によると、100万人以上のウィスコンシン州市民がすでに投票用紙を返送したが、郵便投票を申請したものの未返送の人が70万人もいる。大統領選挙日まで1週間を切り、郵便配達の遅延が意味することは、州が、選挙日後に受領された郵送票でも投票日より前の消印が押されていれば集計に含めるという判断を下さない限り、多くの市民にとって投票用紙を郵送で戻すにはすでに手遅れかもしれないということだ。
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