未知の人獣共通感染症を探す
「ウイルスハンター」の仕事
新型コロナウイルスのような新種のウイルスは、今後も見つかる可能性があるのだろうか。未知のウイルスを発見した研究者は、そのウイルスの感染拡大を防止するために何ができるのだろうか。米国疾病予防管理センターの専門家に話を聞いた。 by Mallory Pickett2020.10.30
2009年に2人の農業従事者が数日の間に、発熱、吐き気、下痢、白血球数の急激な減少などの症状でミズーリ州のハートランド病院に入院した。医師は2人の血液サンプルを米国疾病予防管理センター(CDC)へ送った。CDCは、この2人がダニに噛まれてそれまで知られていなかった新しいウイルスに感染したことを発見した。CDCはそのウイルスをハートランド・ウイルスと名付けた。その5年後、ハートランド・ウイルスの疑いのある患者の血液サンプルを調べた検査技師が別の新しいウイルスを特定した。そのウイルスはバーボン・ウイルスと名付けられた。
1900年以降、ハートランド・ウイルスとバーボン・ウイルスが発見される前に特定されたダニ媒介性の新しい病原体はわずか14種類だった。この2種類の新たな発見は、人獣共通感染症を起こす病原体(動物から人へ伝播するウイルスまたはバクテリア。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はこの1つだと考えられている)が考えられていたよりも数多く存在することを裏付けている。
新種のウイルスを発見した研究者は、そのウイルスの感染拡大を防止するために実際にできることはあるのだろうか。ハートランド・ウイルスへの対応を指揮し、これまで50件の感染症例を記録した追跡レジストリを作成したCDCの疫学者であるエリン・J・ステープルズ博士に話を聞いた。
◆◆◆
——医師や科学者はどのくらいの頻度で人に感染する新型ウイルスを発見しますか?
(ダニ媒介性疾患の場合)ほとんどの科学者や研究者は、現役の間に新しいウイルスを発見することはありません。ですから、私は比較的新しいウイルスの研究に携わることができて運がよかったと思っています。
——新しいウイルスの発見は通常、偶然ですか?それとも、探している人がいるから発見されるのですか?
おそらく、誰かが探している場合よりも、偶然の場合の方が少し多いと思います。私たちはハートランド・ウイルスを探していたときにバーボン・ウイルスを発見しました。しかし、ある種の監視プロジェクトを作ろうとして実施されているプログラムもあります。このようなプログラムでは、いきなり高熱が出る急性熱性疾患を調べ、既知の病原体を検査し、何も見つからない場合は、次世代シーケンシングなどの異なる手法の使用に移ります。
——ハートランド・ウイルスが発見されてから約10年経ちます。ハートランドは本当に新しいウイルスだと思いますか? それとも、これまで常に存在していたのに、医師の目に止まることがなかっただけだと思いますか?
ウイルス学者はハートランド・ウイルスのゲノム配列を調査しました。ゲノム配列の変化から、ウイルスの進化を解明し、ウイルスの存在期間を予測できます。その結果分かったのは、ハートランド・ウイルスが米国に数十年かそれ以 …
- 人気の記事ランキング
-
- What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
- Google DeepMind has a new way to look inside an AI’s “mind” AIの「頭の中」で何が起きているのか? ディープマインドが新ツール
- Google DeepMind has a new way to look inside an AI’s “mind” AIの「頭の中」で何が起きているのか? ディープマインドが新ツール
- This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画