ネルウィン・トーマスは2016年の大統領選挙で、ヒラリー・クリントン陣営の副分析チーフとして選挙テクノロジー分野でのキャリアをスタートさせた。政治以外では、エッツィ(Etsy)とフェイスブックという巨大テック企業でビジネスインテリジェンスとデータサイエンス関連の職に就いていた。そして2019年5月、民主党全国委員会(DNC:Democratic National Committee)の最高技術責任者(CTO)に就任した。
政治の世界に初めてビッグデータを持ち込んだのは民主党だったが、崩壊しかかったテックスタックが2016年のクリントンの敗北の一因になったとして痛烈な批判を浴びた。今回のトーマスの活動も大統領選の結果が出る今後数週間で、徹底的に精査されることになるだろう。
民主党のテックスタックを共和党と同等の状態に戻そうという試みは成功しているようだ。10月21日に連邦選挙委員会が公開した報告書により、バイデン陣営がトランプ陣営に対して大きな金銭的アドバンテージをもっていることが明らかになった。その要因のひとつは、テクノロジーの改善にあると言えるかもしれない。そうした進歩と「民主党データ交換所(Democratic Data Exchange)」と呼ばれる、有権者情報を共有する新たなシステムにより、民主党は既に投票を済ませた有権者を追跡し、彼らに対する呼びかけを止めることができている。これによりバイデン陣営は、山場の時期にコストを大きく削減できている。
トーマスCTOにインタビューし、戦略やチーム、今後の計画、選挙翌日の11月4日に何をする予定かなど、話を聞いた。
(内容を明確にするため、会話の内容に編集を加えている)
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——民主党全国委員会のCTOという立場についてどう感じていますか?
日々、素晴らしい仕事だと感じています。すべての民主党員のミッションや価値のために働けることは最高です。自分の仕事が1人の候補者だけのためにあるのではなく、小さな町の町長選など、全国の候補者たちに幅広く役立っていると実感できています。
——現在、日々の活動としてどんなことをしていますか?
今はセキュリティと負荷試験にかかりきりの状態です。特に注力している3つのメインシステムがあります。ひとつは、全国の事前投票および不在者投票に関するあらゆるデータを処理するシステムです。その情報を選挙戦の戦略に組み込めるようにすると同時に、すでに投票を済ませた有権者の正確な情報を陣営が把握することで、その人たちを呼びかけの対象から外すことができます。
2つめは、民主党のエコシステムにおいてメインの有権者教育および有権者アクションセンターとなっている「アイ・ウィル・ボウト・ドットコム(iwillvote.com)」です。私たちはこのサイトの構築・保守をしています。討論会の後、ツイッターで「フライ・ウィル・ボウト・ドットコム(flywillvote.com)」がトレンドになり、数百万人の訪問者に対応することになりました。先週末のことだったと思います。
選挙関連で特に多用されているもうひとつのシステムは、「LBJ」と呼ばれる有権者保護ソフトウェアです。これは、有権者に対して抑圧が実施された場合に追跡し、対応するためのものです。
——あなたのチームには何人のメンバーがいますか? 組織構造はどうなっているのでしょう?
現在私のチームには4つのメイングループがあり、約65人が所属しています。プロダクト開発チームでは、プロダクトマネージャー、エンジニア、デー …