KADOKAWA Technology Review
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NASA探査機が小惑星ベンヌとの接触に成功、岩石サンプルを採取
NASA
OSIRIS-REx survived its touchdown on asteroid Bennu—now we wait to see if it got a sample

NASA探査機が小惑星ベンヌとの接触に成功、岩石サンプルを採取

NASAの探査機「オサイリス・レックス」は10月20日、ミッションの最大の目的である小惑星「ベンヌ」表面のサンプル採取作業を実施した。探査機は現在、ベンヌから安全な距離までを離れており、十分な量のサンプルを採取できたかどうかを調べることになっている。 by Neel V. Patel2020.10.24

米国東部時間の10月20日午後6時8分、米航空宇宙局(NASA)の探査機「オサイリス・レックス(OSIRIS-REx)」は、地球から約3億2000万キロメートル離れた小惑星「ベンヌ(Bennu)」の表面への4時間半の降下作業を終えた。同探査機は目的地点に到達すると、ゴツゴツした小石やちりを回収するために地表に短時間接触してから無事に飛び立った。サンプル採取に成功したかどうかが判明するまでには、もうしばらく時間がかかる。

ベンヌのような小惑星は、太陽系で最古の天体に属する。最終的に地球などの惑星を形成したのと同じ物質(有機物や含水鉱物など)が、ぎっしり詰まったタイムカプセルなのだ。そのような小惑星を詳細に調査すれば、生物の居住に適した世界が形成された過程について新たな知見が得られる可能性がある。

しかし、ベンヌのような天体の起源や進化について本当に理解するには、地球の研究所で調査する必要がある。オサイリス・レックスの主な目標は常に、研究者が詳しく調べられるようにベンヌのサンプルを持ち帰ることだった。

オサイリス・レックスは、縦約16mの「ナイチンゲール(Nightingale)」という地点にタッチダウンし、目標ポイントとの誤差はほぼ1m以内だった。サンプル採取は、「タッチ・アンド・ゴー」をするポゴスティックのような手法で実施した。長さ約3.3m・幅約0.3mのアームを地表に伸ばして約6秒間接触し、その間に窒素ガスを噴射して小さな岩やちりを舞い上げ、アーム先端の回収チャンバーに採取した。採取作業のほとんどは最初の3秒間で実行された。アームの先端自体が地表に潜り込んで岩石を破砕したように見えるが、これは採取量を増やすのに役立ったと思われる。探査機はその後、ベンヌから安全な距離まで退避した。

「すべてがまさに完璧でした」。サンプル採取を終えた後、オサイリス・レックスの主任調査員を務めるアリゾナ大学のダンテ・ローレッタ教授は「NASAテレビ(NASA TV)」でそう語った。「この小惑星が私たちに投げかけた素晴らしい挑戦も乗り越えました。探査機の操作も問題なかったように思えます」。

ベンヌの地形が当初に考えられていたものとは異なることが分かり、サンプル採取の手順は複雑化した。NASAが調査対象としてベンヌを最初に選んだ際、科学者たちは、ベンヌが浜辺のように柔らかい砂状の物質に覆われていると考えていたのだ。もしそうであれば、採取作業は非常に楽だっただろう。だが実際はそうではなく、ベンヌは表面がゴツゴツしており、巨礫などの危険な物体に覆われていることが、オサイリス・レックスの調査によりすぐに判明した。その事実は、サンプル採取に新たな課題を突きつけることになった。しかし幸運なことに、探査機はそれらの危険を避けることができた。

オサイリス・レックスのミッションはまだ終わっていない。タッチ・アンド・ゴーの動作は順調だったが、十分な量の岩石を回収できたかどうかは不明だ。NASAは最低でも60グラムが必要だとしているが、その量を確保できなかった確率が30パーセントある。事前の分析を基に、ローレッタ教授は楽観的な見方をしており、回収作業は「想像しうる限り最高の状態で実施できました」と語っている。

ローレッタ教授らのチームは、回収したサンプルの量を正確に把握するために数回の試験を実行する必要がある。10月24日にはその一環としてサンプルの質量測定が実施され、26日までには報告書をまとめる予定だ。問題がないようであれば、オサイリス・レックスはサンプルを収容し、来春にはベンヌから離れる。そして、2023年にサンプルを地球に持ち帰ることになっている。うまく回収できていない場合は、あと2回、サンプル採取を試みることができる。後日、MITテクノロジーレビューでもその結果をお知らせする。

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ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。
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