若く健康な志願者を意図的に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染させる世界初の「ヒトチャレンジ」治験が、ロンドン市内の病院で2021年1月に始まる。10月20日に発表されたこの治験では、 18歳から30歳までの健康な参加者50人を募集する。英国政府が3360万ポンド(4400万ドル)をこの治験に出資すると発表しており、ヒトチャレンジ試験の実績があるエイチビーボ(hVIVO)と共同で、倫理委員会と規制当局の承認が下り次第、ロイヤル・フリー・ロンドン英国国民保健サービス(NHS)ファンデーション・トラストで実施する。被験者には謝礼が支払われる。被験者は治験期間中隔離されるほか、副作用の確認のため最長1年間監視される。
この治験は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について入念に研究することを容易にし、ワクチンの開発を加速することを目指している。治験の第1段階では、発症に至る最低限のウイルス量を明らかにする。その後、ワクチンが感染を防げるのかどうか確認したり、他の治療方法を試して免疫反応を探ることも検討されている。
このアプローチの利点は複数あるワクチン候補のどれが最も有効であるかを比較して調べられる点だ。治験責任者であるインペリアル・カレッジ・ロンドンのピーター・オープンショー医師は声明の中で以下のように述べている。「被験者を既知のヒト病原体に意図的に感染させるのは、決して軽々しくされるべきことではありません。ただこの種の治験により、病気について非常に多くのことを明らかにできます。新型コロナウイルス感染症のようにすでに研究が進んでいる病気であっても同様です。新型コロナウイルス感染症に有効なワクチンや新たな治療法の開発をできるだけ速く進めることが非常に重要です。ヒトチャレンジ治験により、リスクを抑えつつ新薬やワクチンの開発を加速できる可能性があります」。
とはいえ、この治験には明らかなリスクがある。被験者は重症化するかもしれないし、最悪の場合、死亡する可能性もある。新型コロナウイルスに自然に感染した人を対象として、治療法とワクチンを試す大規模な臨床試験も現在、複数実施されている。加えて、ヒトチャレンジ治験を開始する2021年1月までに、有効なワクチンの開発がほぼ完了しているかもしれない。
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