崩壊する「経済成長」神話、
資本主義の危機を
テクノロジーは救えるか
新型コロナによって世界経済は大きな打撃を受けたが、それ以前から資本主義は危機に瀕していた。人々は資本主義の基本的な考え方である「経済成長」に疑問を持つようになっている。 by David Rotman2020.10.22
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に大流行し、世界経済の大部分が大打撃を受ける以前においてさえ、資本主義が危機にあることは明白であった。自由市場が足かせなく放置されたことによって、米国では所得や富の不平等が極端に拡大した。先進国の多くで生産性の伸びが鈍化し、まるまる一世代の人々の経済的機会が失われてしまった。企業は、地球温暖化にもはや無関心ではいられなくなっているとしても、地球温暖化の進行を抑えられるような変化を起こす力はないのではないかと思われる様相を呈していた。
そうした時に新型コロナウイルス感染症の大流行が起こり、多くの人が失業した。さらには、気候変動のせいで悪化している山火事が米国の西海岸の多くで頻発した。経済システムが機能不全に陥っていることを示すあらゆる一触即発の徴候が突如露呈し、大規模な災害となって現れた。
米国や欧州の人々の多くが、資本主義を支えているいくつかの柱に疑問を呈し始めたのも無理はない。とりわけ、自由市場への盲信と、経済成長が人々繁栄をもたらし問題を解決してくれるという確信が揺らぎ始めている。
経済成長に対する反感は新しいことではない。1970年代初期には「脱成長」という言葉が作られていた。だが昨今では,気候変動への懸念や不平等の深刻化を契機として、経済成長に対する反感が一つの運動として改めて浮上してきている。
「成長の終焉」を求める声は経済の世界では未だ周辺的存在だ。しかし、脱成長を求める主張は、「エクスティンクション・レベリオン(Extinction Rebellion、絶滅への反抗)」やイタリアの民衆派の「五つ星運動( Five Star Movement)」など多様な政治運動によって取り上げられるようになっている。「それなのにあなた方は、おカネについてと、永遠の経済成長というおとぎ話についてばかり話をしています。よくもそんなことができたものです!」と気候変動に関する若き活動家、グレタ・トゥンベリは昨年、国連の気候変動週間において外交官や政治家からなる聴衆を前に叫んだ。
脱成長運動の中核には資本主義そのものに対する批判がある。書籍『Less Is More: How Degrowth Will Save the World(より少ないことはより多いこと:脱成長が世界を救う方法、未邦訳)』の著者であるジェイソン・ヒッケルは次のように書いている。「資本主義は根本的に成長に依存している。資本主義は、何か特定の目的に向かう成長ではなく、言ってみれば、成長を自己目的としている」。
ヒッケルなどの脱成長論者によれば、「思慮なき成長」は、地球にも、我々の精神的な良きあり方の点からも非常に悪しきものだという。我々は「あり方についての新しい理論」を発展させる必要があり、「生きている世界」における我々の立ち位置を再考する必要がある、とヒッケルは書いている(ヒッケルはさらに、知的な植物およびそうした植物が意思疎通する能力について書いている。これらの議論は植物学上異論があり、経済学上も理解しづらい)。しかし、こうした議論はすべて、実際の経済改革というよりも、人々の生活様式に社会工学的措置をとることに関するものであるとして却下したくなる。
人類学者であるヒッケルは、「広告を削減せよ」「計画的陳腐化を止めよ」などいくつかの提案をしているが、成長なき経済を機能させるための実践的な措置についてはほとんど何も書いていない。残念ながら、植物の知性について語っても、我々の問題は解決しない。腹を空かした人々に食べ物を与え、良い報酬をもらえる雇用を創出することはできない。
だがそれでも、脱成長運動にも頷ける点はある。気候変動や多くの労働者が金銭的に困難を抱えている現状を前に、資本主義には不 …
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