地球温暖化を1.5℃未満に抑えるためには、今世紀半ば頃までに温室効果ガス排出量を効果的に削減する必要があることが明らかになった。
気候変動に対する取り組みはすでに数十年遅れている状態だが、目標達成の可能性は残っているのだろうか?
国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)は、10月13日に発表した年次報告書で、2050年までに世界が温室効果ガス排出量の「ネットゼロ(実質ゼロ)」を達成するために何が必要かを詳しく調査した(ネットゼロとは、その時点で残っている排出量を植樹などの二酸化炭素除去活動などで相殺し、実質的にゼロの状態にすることを意味する)。IEAによると、目標達成には「エネルギー部門のあらゆる部分で前例なき変革」が必要だと指摘している。
このような抜本的見直しはすぐに開始する必要があるだろう。今後10年という短期間に、世界は以下のことを実行する必要がある。
- 世界の二酸化炭素排出量を2010年比で45%削減する。
- 世界の発電量に占める風力、太陽光、地熱などの再生可能エネルギーの割合を27%から60%に増加させる。
- 太陽光発電の年間導入量を約5倍にする。
- 石炭需要を60%削減する。
- 販売されるすべてのエアコンの半分を最も効率の良いモデルとする。
- 「一次エネルギー」(自然界に存在するままの形でエネルギー源として利用されているもの)の需要を 17%削減する。
IEAのネットゼロ・シナリオには個人の行動を大きく変えることも含まれている。例えば、1時間以内のフライトをすべて低排出の代替手段(水素を動力源とする列車やバスなど)に置き換えたり、3キロメートル未満の移動には徒歩や自転車を利用したりすることなどだ。
多くの科学者は、産業革命以降の気温上昇を1.5℃未満に抑えるという目標は、すでに達成不可能な状態まで来ていると考えている。
気温上昇を2℃程度に抑えるために必要なマイルストーンである「2070年までに温室効果ガス排出量ネットゼロ」という目標でさえ、達成には劇的な変革とはるかに積極的な気候政策が必要になるだろうとIEAは指摘する。今後10年間で、石炭の需要を40%近く削減し、太陽光発電容量を3倍以上に増やし、クリーンカーの販売を全新車販売台数の40%超まで増やす必要がある。