フェイスブック は10月6日 、Qアノン(QAnon)関連のフェイスブック・ページ、グループ、インスタグラム・アカウントを削除すると発表した。「暴力的な内容が含まれていない場合も対象」だという。Qアノンは、リベラル派が秘密の悪魔的な小児性愛者組織を運営しており、トランプ大統領がその組織と闘っていると主張するトランプ支持者らによる陰謀論である。ここ数カ月で「包括的陰謀論」に成長した結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックや大統領選挙に関するデマなど、さまざまなトピックに関する陰謀論的思考の強力な発信源となっている。
今回の決定は、フェイスブックが今年8月、「暴力を引き起こす可能性のある議論」を含むフェイスブック・ページ、グループ、アカウントを削除すると発表した禁止措置を、さらに厳しくしたものだ。当時、Qアノンは 破壊的行為や暴力的行為を助長しており、2019年には米国連邦捜査局(FBI)がQアノンは暴力を誘発する可能性があると結論づけていた。
Qアノンは今夏以前から何年もソーシャル・メディアで活発に活動しており、フェイスブックの部分的禁止措置は多くの批評家から過小かつ遅きに失すると見られていた。ただし、フェイスブックの決定の背景には、今夏に実施されたフェイスブックの内部調査で、Qアノン関連のグループに数百万人ものメンバーがいることが判明するなど、3月以降ソーシャルメディア上でQアノンが驚異的成長を遂げたことがある。今回の発表では、禁止範囲拡大のもう1つの理由として、Qアノンが米国西部の山火事に関する危険なデマの拡散に関与していたことも挙げられている。
ハーバード大学ショレンスタイン・センターのテクノロジー・社会変革プロジェクトで、Qアノンを初期の頃から追跡してきたブライアン・フリードバーグ主任研究員は、今回の発表はQアノン信者の間で、フェイスブックの禁止措置がトランプ大統領に対する「選挙干渉」になるという噂を拡散させる可能性が高いという。だが、フェイスブックの決定は、Qアノンの情報拡散ネットワークから「偽の選挙情報がさらに拡散されることを回避」しようとしているタイミングを示唆しているという。
Qアノンはフェイスブックで大きな存在感を示しているが、ほとんどのソーシャルメディア・プラットフォームに存在しており、Qアノンの間ではフェイスブックやツイッターで取り締まりがさらに強化されることについても、しばらく話題に上がっていた。Qアノンには準備期間があった上、規制を回避する方法もある程度身についている。例えば、陰謀論の中心的存在である「Q」アカウントは最近、フォロワーたちにオンライン上で自分たちを「カモフラージュ」することや、「Q」や「Qアノン」という言葉の使用を控え、それらのキーワードをターゲットにした規制を回避することを指南している。フリードバーグ主任研究員によると、フェイスブックの発表直後にQアノン信者たちがとった行動は、オンラインで組織化するための代わりの場所をツイッターで宣伝することだった。極右系に人気のソーシャルメディア・サイト「ギャブ(Gab)」は、すでにQアノン信者やインフルエンサーへの訴求を開始している。