CDCが新型コロナのガイドラインを更新、空気感染を認める
米国疾病予防管理センター(CDC)が新型コロナウイルスについてのガイドラインを変更し、同ウイルスが空気中を漂う微粒子によって拡散する可能性があることを認めた。ただし、「限定的かつ稀な」状況でのみ生じると主張している。 by Charlotte Jee2020.10.08
米国疾病予防管理センター(CDC)はガイドラインを更新し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が空気中を漂う微粒子によって拡散する可能性があることを認めた。同センターは、新型コロナウイルスに感染した人が約2メートル以上の距離を置いている場合でも、あるいは感染者がその場所を去った少し後でも、他の人に感染させる可能性がある証拠が積み上がっていることから、この決定を下したと発表した。こうした感染例は、すべて換気が不十分で閉鎖された空間で起こっており、多くの場合、歌唱やエクササイズといったより激しい呼吸を引き起こす活動を伴っていた。
しかしながら、「CDCは現在の科学に基づき、新型コロナウイルス感染者とより長く、より密接に接触する人ほど、感染の可能性が高いと考えている」と、声明の中で述べている。先月、CDCは、一旦は空気媒介伝播(Airborne transmission、一般に「空気感染」とされる)を認めるガイダンスを発表したものの、突如撤回した経緯がある。待望された今回のガイドライン更新は、状況を最終的に明らかにするのに役立つかもしれない。
空気媒介伝播が発生しているという証拠は、何カ月にもわたって積み上がってきた。239人の専門家は世界保健機関(WHO)に宛てた公開書簡を7月に発表し、空気媒介伝播の事実を認めるよう求めた。世界保健機関は、依然として空気媒介伝播をパンデミックの重要因子として認識していない。空気媒介伝播が主な感染経路であると主張しているエアロゾル研究者たちは、CDCの認識の遅さを不満に感じている。CDCは依然として、空気媒介伝播が「限定的かつ稀な」状況でのみ生じると主張しているからだ。新型コロナウイルスの空気媒介伝播が事実であるかどうかは、レストラン、ジム、バー、学校、オフィスといった空間の再開がずっとリスクの高いものになることもあり、激しい論争のテーマとなっている。
CDCは、人との距離を約2メートル以上取り、鼻と口を覆うマスクを着用し、頻繁に手を洗い、手で触れやすい表面を頻繁に洗浄し、具合が悪いときは外出しないよう勧告している。しかしながら、新型コロナウイルスの空気媒介伝播を認めたことにより、強調点を変更し、さらに踏み込む必要がある。建物の換気を適切に実施し、屋内の人数を常に制限し、しっかりと距離を保ち、マスク着用を促し、人々ができるだけ屋外で交流するように勧告すべきである。「エアロゾル感染は、全員がタバコの煙を吐き出すようなものであることを理解する必要があります。誰も他人の吐き出した煙をできるだけ吸い込みたくないと思います。みんなが煙を吐き出して、吸い込むのを避けようとしているところを想像してみてください」。20年間エアロゾルを研究してきたコロラド大学ボルダー校のホセ=ルイス・ヒメネス教授は、MITテクノロジーレビューのインタビューで語った。
ヒメネス教授は、今回の新しいCDCのガイドライン更新が、広く受け入れられている「エアロゾル」という言葉ではなく、「小さな飛沫」という言い回しを使って紛らわしく書かれていると批判した。同教授は、CDCの文書が空気媒介伝播の重要性を軽視していることは、極めて重大であるとし、「スーパースプレッディング現象が感染の大きな部分を占めることがわかっています。そして、これまでに調査されたどのスーパースプレッディング現象でも、エアロゾル感染が大多数を占めているように思えます」と語った。さらに、CDCの更新されたガイドラインでは、部屋や場所の共有による空気媒介伝播は稀であると示唆しているようだが、実際はそうではないと語っている。「例えば、ホワイトハウスで何人も感染したことが、説明としては最もピンとくるでしょう」。
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- シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
- 米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。