米国のドナルド・トランプ大統領が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者に投与されることが多いステロイド薬デキサメタゾンの使用を始めた。6月の研究では、デキサメタゾンが新型コロナ重症患者の死亡率を大幅に下げる可能性が示されている。世界保健機関(WHO)は、「新型コロナの重症・重篤」患者にのみデキサメタゾンを使用するよう推奨している。
主治医らは10月4日の記者会見で、トランプ大統領の血中酸素濃度が低下したため酸素吸入したことも発表した。新型コロナ患者の入院期間を短縮し、命を救えることが証拠により示されている「レムデシビル」も5日間投与されているという。一方、主治医らは4日の会見で、トランプ大統領は病院のベッドから出て歩くことができると説明し、5日にも退院する可能性があると述べた(日本版注:トランプ大統領は5日夜に退院)。トランプはその後同日、病院を一時外出してシボレー・サバーバンの専用車の中から支持者たちに手を振った。その決断について、大統領の治療にあたっているウォルター・リード軍医療センターのある医師は、病院職員やシークレットサービスを危険に晒した可能性がある「狂気」だと述べた。
74歳という高齢で肥満体であることを考慮すれば、トランプ大統領は重症化リスクが高いといえる。だが、医師らが自らの医学的評価に基づいてこの治療薬カクテルを投与しているのか、大統領に指示されたのかは不明だ。2日には他の米国人は利用できない実験的かつ最先端の未承認の抗体治療薬が投与された。リジェネロンが開発する治療薬で、体内の強力な免疫反応を再現して、新型コロナの重症化を防ぐよう設計されている。これらの治療薬を同時に使用することが治療効果に与える影響については、まだ研究されていない。
トランプ大統領はそもそもどのように新型コロナに感染したのか? 新型コロナウイルスに曝されて検査で陽性と分かるまで2日~14日かかるため、感染経路を確実に把握することは不可能だ。側近のホープ・ヒックスから新型コロナに感染したというのが有力な説になっているが、9月26日に開かれたホワイトハウスでの式典が「感染拡大」イベントとなった可能性を示す証拠が出てきている。同式典に参加した少なくとも7人に陽性となった。トランプ大統領が第三者に感染させたかどうかは不明だが、選挙運動や討論会、資金調達イベントの多忙なスケジュールを考慮すれば、その可能性は十分にありそうだ。
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