人権擁護派が英国の新デジタル監視法制度に憤慨しているのは、英国民のプライバシーを侵害するからだけではない。この法律が前例になって、他の民主主義国が追随することを懸念しているのだ。
11月下旬に成立し、今年から以前の監視法制度と置き換えられた調査権限法(反対派は「のぞきのライセンス(Snooper’s Charter)」という)は、英国の司法当局や諜報機関に対して、インターネットの監視や取り調べに関係する機器のハックなど、幅広い権限を新設し、テック企業にはユーザー・データへの提供(製品の設計変更を強いることになる)を求めている。また、調査権限法は捜査官がこの権限を「いくらでも」行使できるようにしており、捜査機関は捜査に無関係な人々の情報を含む大量のデータにアクセスできることになる。捜査機関は犯罪容疑者でない人の機器でもハックできるのだ。
反対派は法律の多くの部分を問題視しているが、最大の論点は、インターネット・サービス事業者(ISP)に対して、全利用者の12カ月間分の「インターネット接続記録」(訪問したWebサイトや使用したモバイル・アプリ、アクセス時刻、利用期間等)の保持を強制する権限を政府に与えていることだ。捜査機関は裁判所の許可なくデータにアクセスできる。ドント・スパイ・オン・アス(監視制度改革を推進する非政府組織の連合団体)の元副理事で、ロンドン大学クイーン・メアリー校のエリック・キング客員講師(監視法制度)は「このような制度は西側の民主主義世界にはひとつもありません」という。
英国政府はデータ保持強制の先駆者(独裁国では一般的だが) …