40年間精神科医をしてきたチャールズ・マーマー医師は、診察に訪れた戦闘経験者について、いまだに心的外傷後ストレス障害(PTSD)を100%正確には診断できない。
「診療室に来た兵士がPTSDかどうか判断するのは難しくないと思うでしょう。でも抱えている問題のことを話すのを患者が恥ずかしかったり、機密情報取扱許可を取り消されたくなかったり、あるいは嫌な夢を見るかと私が聞いてよく眠れていると答えたら、正しく判断できるでしょうか?」
ニューヨーク大学ランゴーン・メディカルセンター精神科の学科長を務めるマーマー医師は、患者の話し声に答があると期待している。
音声サンプルは健康状態に関する情報の宝庫で、微妙な口調が隠れた疾患を示したり、病気のリスク指標になったりする可能性があると研究者は考えている。スマホなどのウェアラブル機器から短い発話サンプルを録音・解析し、疾患のバイオマーカーを見つけることで、数年以内に人の健康状態を遠隔で監視できるようになるかもしれない。
PTSDのような精神科疾患では、血液検査もなく、自分のメンタルヘルスについて話すのを恥ずかしがることが多いため、症状が見逃されてしまうことがある。そこで音声診断が役に立つ。
5年間にわたる研究の一環として、マーマー医師は戦闘経験者の音声サンプルを集め、声の調子や高さ、リズム、速さ、音量のような口調を解析し、PTSDや外傷性脳損傷(TBI)のような見えない傷害の兆候を探している。機械学習で声の特徴を抽出し、アルゴリズムがPTSDやTBIなどの疾患を持つ人の音声パターンを見つけ出して、健康な人の音声サンプルと比較するのだ。
マーマー医師はSRIインターナショナル(カリフォルニア州北部の非 …