大流行の恐れがあるウイルスに対抗するワクチンを開発するため、世界最大規模の構想が発表された。
「感染症予防のイノベーション連合 (CEPI:Coalition for Epidemic Preparedness Innovations)」と呼ばれる予定の新構想は、ウェルカム信託とビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団から1億ドルずつ、残りはノルウェー、ドイツ、日本の各国政府の資金提供により、まず4億6000万ドルの資金提供を受ける。CEPIは2022年までに10億ドルの資金確保を望んでおり、インドや欧州委員会による参加がすでに期待されている。
CEPIは世界経済フォーラムが開催されているダボスで発足し、近い将来に蔓延する恐れがあるウイルスに対抗するワクチンの開発、さらにワクチン供給システムの構築により、エボラ熱のような伝染病が猛威が振るうのを防ぐのが目標だ。最初の課題は、ラッサ熱やニパウィルス、中東呼吸器症候群(MERS)だ。
CEPIは、いわゆるプラットフォーム・テクノロジーも開発する予定だ。実験的な手法として、免疫反応を活性化させる、人工DNAを使った新たなワクチンを製造する。理論上は、DNAを使った手法でワクチンの製造が早まるとされているが、感染症予防のワクチン開発にも適用できるかはほとんど立証されていない。
新構想が、ワクチンが手に入らない西アフリカで猛威を振るったエボラ熱を教訓にしているのは明らかだ。では、なぜこのような規模の構想が求められているのか? ウォール・ストリート・ジャーナル紙(ペイウォール)が明快だ。「次々と登場する感染症を予防できるワクチンはない。なぜなら、製薬会社の収益以上に開発コストがかかるからだ」
製薬業界に頼り切るのではなく、CEPIは学術機関や非上場企業、政府、資金提供団体とも連携を目指すつもりだが、そうでもしなければ資金確保は難しいだろう。こうした外部の組織との連携を通して、CEPIは少なくとも4種類のワクチンを研究現場から選出し、開発や実験によって、今後5年以内に大量製造段階に至ることを目指している。
規模が大きすぎると決めつける前に、支援者の一員であるビル・ゲイツがこのプロジェクトで叶えたい目標を聞こう。フィナンシャル・タイムズ紙(ペイウォール)の取材に対し、ゲイツはCEPIがMERSのようなウイルスを予防するワクチンの開発にかかる時間を12カ月以下に短縮化できないなら「落胆する」だろうと語った。現行の開発過程では、10年以上はかかるとされている。
CEPIが掲げている目標はかなり野心的だ。しかも、達成できる保証はない。ただ、目標期限内にワクチンを開発できなくても、高額な投資のおかげで少なくともワクチンは開発される。
(関連記事:Nature, Wall Street Journal (paywall), Financial Times (paywall))