急勾配屋根の建物が十数棟、露天掘り鉱山の端にしがみつくように立っている。そのはるか上の巨大な岩のアーチ上には、誰もたどり着くことができない家がある。その他の場所を見ると、高架式の鉄道がカラフルな高層ビル群を取り囲み、舗装された大きな広場を飾るように凝った装飾の塔が立っている。そして、島の上ではたった1棟の風車が回っていて、それを四角い豚たちが囲んでいる。これは人工知能(AI)が作ったマインクラフトの街だ。
長い間、マインクラフトは大胆な発明のキャンバスとなってきた。ファンたちはこの大ヒットのブロック構築ゲームを使って、シカゴのダウンタウンやキングズランディングから演算ができるCPUまで、あらゆるもののレプリカを作り上げてきた。マインクラフトが最初にリリースされてから10年になるが、その間、構築できるものなら何でも作られてきた。
2018年からマインクラフトは、機械の能力を伸ばそうというクリエイティブ・チャレンジの舞台にもなっている。毎年開催されている「ジェネレイティブ・デザイン・イン・マインクラフト(Generative Design in Minecraft:GDMC)」コンテストでは、初見の場所にリアルな町や村を生成できるAIを構築するように参加者に呼びかけている。同コンテストは今のところは単なるお楽しみとして実施されているが、各種各様のAI挑戦者が探求した手法は、現実世界の都市計画家が今後実際に利用できる手法の先駆けとなることが期待される。
https://youtu.be/D6MavvGre-k
受賞作品に共通しているのは、橋や建物の配置場所や地形を平らにするタイミングを、さまざまな手法を使って識別しているという点だ。開拓集落の辺境地帯をつなぐ昔ながらの経路探索アルゴリズムもあれば、簡単なルールを使って複雑な構造を作り出すセル・オートマトンや、機械学習も使われている。
コンテストはこの3年間で大きく進歩した。初期の集落は、いかにも機械で作りました、といったものが多かった。建物の並び方は繰り返しが多く、密集の仕方もランダムだった。9月17日に発表された今年の受賞作品で特徴的だったのは、それぞれの場所に合わせて、まるで現実にあるかのように配置された集落であるということだ。道路は丘陵地に沿っており、川にはきちんと橋がかけられていて、家の中には家具さえ置かれている。
オープンエンドで主観的なGDMCコンテストは、AIの限界に挑戦する目的で創設された。米国国防先端研究計画局(DARPA)主催の「DARPAチャレンジ」のように自動運転車やロボットを対象としたAIコンテストとは異なり、明確なゴールは決められていない。そもそも、どんな村をよい村だとすればよいのだろうか?GDMCコンテストの共同主催者であり英国ハートフォードシャー大学のコンピュータ科学者であるクリストフ・サルゲ博士は、「最適化できる数値などはありません」と言う。
GDMCコンテストの課題は自由度が高いため、AIは複数の目標を達成する必要がある。受賞するためには、建築家、考古学者、ゲームデザイナーなど、さまざまなバックグラウンドを持つ人間の審査員8人を感心させなければならないのだ。
これらの審査員は、4つの分野でAI都市計画家に得点を与える。設計を特定の場所にどれだけうまく適応させているか、異なる地域間に橋や道路があるかどうかといった基準に従ってレイアウトがどれだけうまく機能しているか、美的にどれだけ魅力的であるか、デザインがどれだけ物語性を喚起しているか、といったものだ。物語性については、廃墟や建築材料が採掘されたのかもしれない穴のように、街がどのようにして生まれたのかを物語るディテールがあるかどうかが問われる。「初見の地図の上にマインクラフトの村を作ることは、10歳の子どもにでもできることです」とサルゲ博士は言う。「ですが、AI にとっ …