ティックトックとオラクルが提携、ウィーチャット禁止は差し止め
米商務省は9月18日、中国企業が提供するアプリ「ティックトック(TikTok)」と「ウィーチャット(WeChat)」について、9月20日以降、米国国内でのダウンロードを禁止する命令を発表した。だが、命令は実行されなかった。 by Charlotte Jee2020.09.23
米商務省は9月18日、中国企業が提供するアプリ「ティックトック(TikTok)」と「ウィーチャット(WeChat)」について、9月20日以降、米国国内でのダウンロードを禁止する命令を発表した。だが、この命令は実行されなかった。
ドナルド・トランプ大統領は8月6日、ティックトック事業が9月15日までに米国企業に売却されなかった場合、9月20日以降の同アプリのダウンロードを禁止すると発表。9月15日までの事業売却は実現しなかったものの、9月18日、ティックトックを所有する中国企業のバイトダンス(ByteDance)には11月12日までの猶予期間が与えられた。それまでに米政府が納得する合意に到達できれば、米国内での事業を継続できることになる。
猶予期間の付与はトランプ大統領の命令には合致していなかったものの、9月19日にはティックトック事業の株式の計20%をオラクルとウォルマートが取得すると発表。バイトダンスが同事業の株式の過半数を保有し続けることになるこの提携について、トランプ大統領は「支持する」と述べた。バイトダンスによると、存在が疑われているセキュリティの懸念を和らげるため、オラクルは「ティックトックの米国のソースコードに対するセキュリティ査察を実施する権利を持つ」という。トランプ大統領は、米国の教育に対する50億ドルの投資につながると主張しているが、こうした合意についてバイトダンスは「承知していない」としている。また、オラクルは今回の提携で2万5000人の新規雇用が生まれると主張しているが、その可能性は極めて低そうだ。
多用途アプリのウィーチャットは、中国ではメッセージのやり取りから支払いまであらゆることに広く使用されている。9月20日にグーグルとアップルのアプリストアから削除されるはずだったが、合衆国憲法修正第1条が定める言論の自由の確保に深刻な疑義を生じさせるとして、サンフランシスコ連邦地裁がダウンロード禁止措置を差し止めた。米国政府は上訴するとみられている。
トランプ政権は、ティックトックとウィーチャットを禁止する表向きの理由として、国家安全保障上の問題を挙げ、中国共産党が両アプリを使って米国民のデータを盗み出すことを懸念していると説明する。だがトランプ政権は、この主張のいかなる証拠を示すことを繰り返し拒み続けている。
- 人気の記事ランキング
-
- Bringing the lofty ideas of pure math down to earth 崇高な理念を現実へ、 物理学者が学び直して感じた 「数学」を学ぶ意義
- Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 無料イベント「U35イノベーターと考える研究者のキャリア戦略」のご案内
- The 8 worst technology failures of 2024 MITTRが選ぶ、 2024年に「やらかした」 テクノロジー8選
- Google’s new Project Astra could be generative AI’s killer app 世界を驚かせたグーグルの「アストラ」、生成AIのキラーアプリとなるか
- AI’s search for more energy is growing more urgent 生成AIの隠れた代償、激増するデータセンターの環境負荷
- シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
- 米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。