フェイスブックで蔓延る医療デマ、月間5億ビュー=人権団体推計
フェイスブック上で拡散された医療デマの閲覧回数は、信頼できる情報源の閲覧回数の推定4倍にも上っていたことが明らかになった。 by Charlotte Jee2020.09.17
人権団体アバーズ(Avaaz)の分析によると、医療デマを拡散するページが、2020年5月時点でフェイスブック上で推計38億回閲覧されていたことが分かった。閲覧回数は4月にピークに達し、5億回近くに上ったという。まさに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが急速に拡大している時期だ。医療デマを流していた10のWebサイトのコンテンツがフェイスブックで閲覧された回数は、世界保健機関(World Health Organization:WHO)や米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)など信頼できる10の情報源のコンテンツの閲覧回数の4倍近くと推定される。アバーズは反ワクチン運動のような医療デマや、ときには命の危険もある新型コロナの誤った治療法の主張、死者数が過大に集計されているという事実無根の記事などを広めていた、合計82のWebサイトを調査した。
これは決して、被害者のいない問題ではない。「アメリカ熱帯医学・衛生ジャーナル(American Journal of Tropical Medicine and Hygiene)」に掲載された研究で、2020年の最初の3カ月間で、新型コロナに関するデマによって世界で少なくとも800人が死亡し、5800人が入院した可能性があることが判明している。その多くが、メタノールや洗剤が効くと信じて飲んでいた。
こうしたデマは、アバーズが特定したWebサイトへのアクセスをフェイスブックがプラットフォーム上で禁止すれば、ほとんど対処できるはずだ。フェイスブックは2020年4月に、新型コロナにまつわるデマの事実確認や削除について、さらに積極的に取り組んでいくと約束したが、虚偽情報を閲覧・共有した人々に注意喚起するとまでは言わなかった。アバーズは報告書の中で、そうした対策をとることでデマを信じる人がだいぶ減っていくだろうと述べている。またフェイスブックは、ユーザーのニュースフィードで虚偽情報を格下げして拡散される範囲を狭めることで、アルゴリズムを「解毒」する必要があるとも述べている。報告書は、「フェイスブックは医師や衛生の専門家からの度重なる要請にもかかわらず、インフォデミックが克服できる規模およびレベルでの解決策を効果的に適用できていない」と結論付けている。
広報担当者によると、フェイスブックは2020年4~6月にかけて、新型コロナ関連のデマ、9800万件に警告ラベルを付けたという。同社は、「私たちはデマを制限するというアバーズの目標を共有していますが、アバーズの調査結果には当社が実施したデマ拡散防止対策が反映されていません」と述べている。
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- シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
- 米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。