トランプ、バイデンが廃止求める通信品位法230条を残すべき理由
ドナルド・トランプ大統領と彼の政敵であるジョー・バイデンは両者とも、ネット上の投稿に対してプラットフォーム企業に免責保護を与える米国通信品位法230条の取り消しを望んでいる。230条に問題があることは確かだが、取り消すよりも改正する方向で検討すべきだ。 by Paul M. Barrett2020.09.14
米国のドナルド・トランプ大統領と民主党の政敵であるジョー・バイデンには、合意する課題が少なくともひとつある。米国通信品位法230条として知られている、謎めいた連邦法についてだ。トランプ大統領は9月8日に、共和党議員は「即座に230条を廃止すべきだ」とツイートした。同様に切迫した言い方で、バイデンは昨年12月にニューヨーク・タイムズ紙に対して「230条は即座に廃止されるべきだ」と述べた。
通信品位法230条は1996年、萌芽期にあった商用インターネットを促進するために制定された。同条項によって、プラットフォームやWebサイトは、ユーザーが投稿した内容に関する訴訟からほぼ守られている。また、企業がホストとして場を提供しているコンテンツを厳しく監視するとしても、この免責は保証されている。
オンラインビジネスを法的に防護することで、230条はインターネットの革新と成長を促進してきた。同法なしでは、新しいインターネット企業はビジネスを浮上させるのにもっと困難を伴っただろうし、確立したプラットフォームでは訴訟リスクの高さに応じてより多くの投稿がブロックされるだろう。政治に関する鋭い議論は削除される可能性があり、表現の自由が制限されることになる。
しかし、インターネット企業が有害なコンテンツを抑制するために十分な対策をしているのか、また、230条が企業に責任を逃れさせているのは効果的なのか、多くの人が疑問を投げ掛けてきたのは当然と言える。米国議会では、さまざまな方法で同法を抑制するため、少なくとも6本の法案が提出されてきた。
この論争に拍車をかけているのは、主要なソーシャルメディア・プラットフォームがホストとして場を提供しているコンテンツを適切に管理していないという、世間一般に広く持たれている感覚だ。つまり、フェイスブックとその子会社であるインスタグラム、ツイッター、グーグルが所有するユーチューブのことだ。その証拠は、選挙や新型コロナウイルスに関する偽情報や、Qアノンなどの陰謀論、ネットいじめ、リベンジポルノの広がりなど枚挙にいとまがない。
230条の言い回しには今日、本当に問題があるが、だからといって全てを葬り去るべきだというわけではない。核の部分は、もっと小さなプラットフォームやWebサイトを訴訟から守ることを主たる目的として維持されるべきだ。同時に、サイト上のコンテンツに関し、インターネット企業にもっと大きな責任を負わせるために同法を改正するべきだ。さらに米国には、確実にこの責任が果たされるようにするための専門の政府機関が必要だ。これを「デジタル規制局」と呼ぼう。筆者は、ニューヨーク大学スターンスクール「ビジネスと人権センター」の新しい報告書においてこのような立場を主張している。
廃止か改正か?
インターネットに関して楽観主義的な見方が大勢だった時代に起草された230条は、オンラインビジネスにとって明らかに自由放任主義の環境を作り上げた。巨獣のような今日のソーシャルメディアの圧倒的な普及を予見していた者は、1990年代半ばにはほとんどいなかった。ソーシャルメディアが拡散する有害な情報の量や種類についても同様だった。
そうは言うものの、230条の批判の全てが同じように引き起こされているわけではない。トランプ大統領が持っ …
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