KADOKAWA Technology Review
×
2024年を代表する若きイノベーターたちに会える!【11/20】は東京・日本橋のIU35 Japan Summitへ
グーグル、コロナ禍で人気のBGMを誰でも作れるAIツール
Google Magenta
Create your own moody quarantine music with Google’s AI

グーグル、コロナ禍で人気のBGMを誰でも作れるAIツール

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による外出規制によって、人々の心が沈み込んでいる。そんな気持ちを和らげるような優しいメロディを、機械学習によって誰でも簡単に作れる音楽プレーヤーをグーグルが開発した。 by Karen Hao2020.09.09

グーグルのマゼンタ(Magenta)チームは、創作プロセスのための機械学習ツールを開発しているチームだ。これまでに作曲を支援するモデルや、ネコのスケッチを補助してくれるツールを開発してきた。ただ楽しいだけでなく、人工知能(AI)がいかに創作を手軽なものにしてくれるのかを追求している。そんなマゼンタの最新プロジェクトは、心地よい巣ごもり音楽を作曲する機会を、誰にでも与えてくれる。しかも、そのために音楽のトレーニングを受ける必要はないのだ。

ローファイ・プレイヤー(Lo-Fi Player)は、この夏にチームに加わった、技術者でアーティストであるヴィベール・チョウ(張欣嘉)によってデザインされたものだ。ユーザーは、バーチャルの部屋の中にあるさまざまなオブジェクトとやりとりすることで、自分だけの「ローファイ・ヒップホップ」のサウンドトラックを生み出せる(日本版注:ローファイ・ヒップホップは2018年ごろからネット上で流行している歌なしの音楽ジャンル。作業用BGMとしてコロナ禍で人気が高まっている)。ローファイ・プレイヤーが目的としているのは、音楽を制作するという経験を、可能な限りシンプルでとっつきやすいものにすることだ。部屋は、ブラウザー上に表示されるドット絵で描かれた2次元空間である。異なるオブジェクトをクリックすることで、ユーザーは異なったトラックをいじることができる。例えば時計やピアノをクリックすると、ドラムラインやメロディを調整できるといった具合だ。

 

customize with ease gif

バックグラウンドでは、2つの機械学習モデルが動いている。ラジオに詰め込まれている1つ目のモデルは、クリックするとメロディを生成する。テレビに隠されている2つ目のモデルは2種類のメロディを補間して、どちらのメロディにも少し似ている新しいメロディを生み出す。

しかし、部屋にあるサウンドのほとんどは、機械学習によって生成されたものではない。これがある意味でポイントなのだ。一連のプロセスの中で、チョウはローファイ・ヒップホップの制作者たちと一緒に、ジャンルを象徴するような心地よい響きのベースライン、ドラムライン、そして背景音としてのアンビエンスを集めた。チョウはまた、ユーザーが選べるように、4種類のメロディの候補を作成した。機械学習は、それぞれのユーザーがユニークなミックスを作れるように、用意されたトラックの上に必要最低限の予測不能な要素を付け足すだけなのだ。

youtube streaming gif

ローファイ・プレイヤーの初期版は、ユーチューブでのインターラクティヴなライブ配信も含んでいる。ユーザーたちはチャット・ウィンドウにコマンドを入力することで、音楽を変化させることができる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による外出規制の中で、音楽制作をより集合的な経験にしようというアイデアだ。ローファイ・プレイヤー・プロジェクトを監修した研究科学者のダグ・エックは、「こんなにも小さなものが、COVID-19のさなかで私たちを結びつけてくれるのです」と述べる。

ローファイ・プレイヤー・プロジェクトはまだ初期のバージョンだが、すでにチョウはさらに多くの可能性を見出している。チョウの夢見ているプロジェクトは、ある意味で音楽制作のためのティックトック(TikTok)を作ることである。つまり、ミュージシャンでない人も音楽編集で遊び、創作物をシェアし、自分を表現できるようなインターフェースを作ることだ。

人気の記事ランキング
  1. How ChatGPT search paves the way for AI agents 脱チャットGPTへ、オープンAIが強化するプラットフォーム戦略
  2. Promotion NIHONBASHI SPACE WEEK 2024 アジア最大級の宇宙ビジネスイベント、東京・日本橋でまもなく開催
  3. Promotion Innovators Under 35 Japan Summit 2024 in Nihonbashi 2024年のイノベーターが集結「U35 Summit」参加者募集中
  4. This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
  5. Inside a fusion energy facility 2026年の稼働目指す、コモンウェルスの核融合施設へ行ってみた
カーレン・ハオ [Karen Hao]米国版 AI担当記者
MITテクノロジーレビューの人工知能(AI)担当記者。特に、AIの倫理と社会的影響、社会貢献活動への応用といった領域についてカバーしています。AIに関する最新のニュースと研究内容を厳選して紹介する米国版ニュースレター「アルゴリズム(Algorithm)」の執筆も担当。グーグルX(Google X)からスピンアウトしたスタートアップ企業でのアプリケーション・エンジニア、クオーツ(Quartz)での記者/データ・サイエンティストの経験を経て、MITテクノロジーレビューに入社しました。
▼Promotion イノベーター under35 2024
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る