IBMは、人工知能(AI)モデルとクラウド・コンピューティングのプラットフォーム、ロボットを組み合わせて、「ロボRXN(RoboRXN)」と呼ばれる新たな化学研究所をクラウド上に構築した。科学者が在宅で新たな分子を設計したり合成したりするのを支援する。
科学者はWebブラウザー経由でロボRXNにログインできる。作成したい分子化合物の骨格構造を白紙のキャンバスに描くと、ロボRXNが機械学習を用いて必要な材料と調合の手順を予測し、遠隔地の研究所のロボットに指示を送ってその内容を実行させる。実験が完了したら、ロボRXNが結果と共に報告書を科学者に送信する仕組みだ。

新薬や新素材が発見されて製品化されるまでには、従来であれば平均で10年間、1000万ドルかかるとされてきた。その時間の多くは、新たな化合物を合成するための実験と、その試行錯誤から発見を得るという骨の折れる繰り返しの作業に費やされる。IBMは、ロボRXNのようなプラットフォームが化合物の作成方法を予測し、実験を自動化することで、この過程を劇的に加速させたいと考えている。理論的には、これによって医薬品開発のコストが下がり、現在のパンデミックのような衛生上の危機に、科学者たちがよりすばやく対応できるようになる。現在のパンデミックの対応では社会的距離が必要とされているため、研究所での作業は停滞を余儀なくされている。
AIとロボット工学を用いて化学合成を高速化させたいと考えているのはIBMだけではない。数多くの学術研究機関やスタートアップ企業が、同じ目標に向かって取り組んでいる。そうしたスタートアップ企業のひとつであるキボティクス(Kebotix)の最高経営責任者(CEO)を務めるジル・ベッカーによると、ユーザーが分子の設計をリモートで送信し、合成した分子の分析結果を受け取るというコンセプトは、今回IBMのプラットフォームが新たにもたらした重要な要素だという。「ロボRXNにより、IBMは発見を加速させるための重要な一歩を踏み出しました」(ベッカーCEO)。
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- カーレン・ハオ [Karen Hao]米国版 寄稿者
- 受賞歴のあるフリー・ジャーナリスト。人工知能が社会に与える影響について取材している。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の海外特派員として中国のテクノロジー業界を担当。2022年4月まではMITテクノロジーレビューのAI担当上級編集者を務めた。