KADOKAWA Technology Review
×
【冬割】 年間購読料20%オフキャンペーン実施中!
Asia’s E-Waste Problem Is Getting Out of Hand

アジア新興国の電子機器廃棄量、iPhone換算で1人30台分

急成長するアジア諸国で廃棄される電子機器の量は欧米に比べてずっと少ない。しかし、廃棄された電気・電子機器を処理する施設がまったく足りないため、成長が続けば社会問題化する可能性もある。 by Jamie Condliffe2017.01.18

アジアは、廃棄された電子機器「e-waste(電子ゴミ)」問題に悩まされている。ただし、問題は廃棄数そのものではない。電子機器を最終的に処理する能力がないのだ。

最近、国連大学が発表した調査によって、アジアでは2014年に1600万トンの電子ゴミが発生したことがわかった。人口1人当たりに換算すると約3.7kgになり、ノートPCで2台分、129gのiPhone 6で30台分だ(これはちょっとあり得ない例えだけれど)。

廃棄数にダントツで大きな影響を与えているのは中国だ。中国で廃棄される電子機器数は度を超しており、2015年には6700トンも増え、2005年に比べて107%も増加した。

電子ゴミ増加の理由は何だろうか。国連大学の調査報告は「アジア諸国が急速に工業化を進め、国民が以前より高い所得や生活水準を手に入れたことで、電気・電子機器の消費量と廃棄量は今後も増え続ける」と説明している。

ただし、アジアでの電子ゴミの増加を嘆くなら、自分たちのことを見つめるのもよい機会だ。米国では、平均1人当たり12.2kgの電子機器を毎年廃棄している。ヨーロッパは年間15.6kg、日本は17.3kgの電子ゴミを廃棄している。日本の廃棄量をiPhone 6に換算すると、約134台分(あくまでも例えているだけですよ)だ。

アジアと欧米の違いは、もちろん、電子ゴミの処理方法にある。理想的には、価値の高い金属が回収され、有害化合物は注意深く処理され、他のモノはリサイクルされるのがよい。しかし、実際そうするには、壊れた電子機器を回収し、分解し、部品を分類・整理してリサイクルし、問題を起こす化学物質を処理しなければならない。

すべての電子機器を完璧に処理するのは、欧米諸国でもまず無理だ。ただし、米国各地にある既存施設なら、それなりの成果は出せそうだ。廃棄されたとはいえ、中には修理して再販売できる電子機器もあるし、機器としては動作しなくても、部品をごっそり取り出して再利用できることもある。ただ、プラスチックは単に焼却処分されてしまうことが多い。

国連大学によれば、日本や台湾、韓国など、一部のアジア諸国では、すでに英国や米国同様、責任ある形で古くなった電子機器を処理している。しかし、中国を筆頭に他の多くの国では、電子ゴミを適切に処理できていない。アジア各地の路地で、有用な金属を取り出すため、コンピューターをハンマーで叩いて壊したり、スマホに火をつけたりする光景は珍しくない。問題は、こうした処理方法では、環境にも人間の健康にもよくないことだ。

国連大学の調査報告は、意識を高め、適切な処理施設を作り、電子ゴミの処理を厳しく管理することで、現状を変えられると提案している。提案リストには、そもそも電子機器をリサイクルしやすく設計することも加えたらどうだろうか。ただし、この方法は、最大手のテック企業でさえ、最近になってようやく採用し始めたばかりだ。

実際、こうした変革は急を要する。アジアの中産階級のライフスタイルは急速に向上し続けており、電子機器の年間平均廃棄量は欧米並みに増加すると予想できる。したがって、リサイクルの処理能力を劇的に向上させなければならない。

(関連記事:“Where Cell Phones Go to Die,” “Apple’s Recycling Robot May Help Build iPhones, Too”)

人気の記事ランキング
  1. OpenAI has created an AI model for longevity science オープンAI、「GPT-4b micro」で科学分野に参入へ
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 無料イベント「U35イノベーターと考える研究者のキャリア戦略」のご案内
  3. 10 Breakthrough Technologies 2025 MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版
  4. Driving into the future 「世界を変える10大技術」の舞台裏、2024年の誤算とは?
タグ
クレジット Photograph by baselactionnetwork | flickr
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
▼Promotion
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る