準惑星ケレスの地下に塩水湖か、ドーン探査機のデータが示す
火星と木星の間の小惑星帯にある準惑星ケレスが地下深部に海水をたたえている可能性があるとする研究成果が発表された。ケレスはかつて生命体が生存できる世界であった可能性があり、あるいは今もそうであるのかもしれない。 by Neel V. Patel2020.08.13
ネイチャー・アストロノミー(Nature Astronomy)誌に掲載された新たな研究論文によると、太陽系にある最大の準惑星であるケレス(Ceres)には、表面に流出している液体の水が存在するようだ。米国航空宇宙局(NASA)の探査機「ドーン(Dawn)」のデータは、ケレスが地下深部に海水をたたえている可能性を示しているという。
火星と木星の間の小惑星帯にある準惑星ケレスは、2015年3月から2018年11月までの期間、探査機ドーンによって熱心に調査されてきた。最後の数週間で、ドーンはケレス表面からわずか約35キロメートルの距離まで近づき、準惑星ケレスの化学組成に関する膨大な量のデータを収集した。ドーンはケレス表面に多くの塩化ナトリウムの堆積物を発見した。それらは地表に湧き上がり、蒸発して塩の堆積物を形成した液体に由来する可能性があると科学者たちは考えている。
しかし、その液体がどのように地表に湧き出たのかは不明のままだった。調査期間の最後の数週間でドーンが収集した高解像度画像の新たな分析で、イタリアの研究者たちは、液体がオッカトル(Occator )・クレーターの表面下およそ40キロメートルの場所に溜まった、幅約数百から千キロメートルに及ぶ可能性のある地下の塩水湖に由来することを明らかにした。地表で発見された塩は、ケレスのような環境で水が液体状態を維持するのに役立つという意味で重要だ。
今回の研究結果は、ケレスと、およそ2000万年前にできた直径92キロメートルのオッカトル・クレーター周辺の地質に関する新たな洞察を明らかにする他の研究論文とともに発表された。そのうちのいくつかの研究でも他の方法でクレーターにおける水の存在について紐解いており、ある研究は、地球の地下水が高い圧力を受けて形成される氷の山に類似する円錐形の丘に注目している。しかし、塩の堆積物が最も有力な証拠を提示している。
塩の堆積物が形成されたのは、わずか数百万年前であり、最近のことだ。ドーンのデータは、脱水した塩の内部に実は少量の水が存在することを示している。そのことは、塩の堆積を促している何らかの地質学的活動がいまだに続いている可能性があることを示唆しており、その場合、ケレスは今も活動的な天体であることを意味することになる。
塩水は厳しい環境になり得るが、海洋の存在は、準惑星ケレスの他の場所にもこのような塩水が溜まっている可能性を示唆している。つまり、ケレスがかつて生命体が生存できる世界であった可能性があり、あるいは今もそうであるのかもしれない。
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- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。