米ノババックスの新型コロナワクチン、初期治験で抗体産生を確認
米国のバイオテック企業であるノババックスが、開発中の新型コロナワクチン候補の初期治験を実施したところ、ワクチンを投与された131人の被験者全員に同ウイルスに対する高レベルの抗体産生が確認された。 by Charlotte Jee2020.08.07
米メリーランド州のバイオテクノロジー企業ノババックス(Novavax)は、開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン候補の初期治験で有望な結果が示されたことを発表した。この治験ではオーストラリアの健康な志願者131人を対象に、プラセボまたは4種類のワクチンのうちの1つが投与された。4種類のワクチンとは、2種類の投与量と、アジュバンド(ワクチンと一緒に投与して効果を高めるための物質)の有無の組み合わせである。ワクチンを投与された被験者全員に新型コロナウイルスに対する高レベルの抗体産生が確認された。ノババックスは先月、米国連邦政府の新型コロナワクチン開発プログラムである「ワープ・スピード作戦」から、16億ドルの資金提供を受けることで合意している。
ワクチン投与の副作用として、被験者の約80%が注射部位に疼痛と圧痛を訴え、60%以上が疲労や頭痛などを訴えた。ほとんどは軽度だったが、8人の患者に重度の副作用が出た。ノババックスによると、ワクチン投与によって入院した被験者はおらず、副作用はすべて数日後には消えたという。
ただし、他社の第1相試験と同様、ノババックスの今回の試験の目的はワクチンの有効性ではなく安全性を検証することだ。試験データは査読前論文(プレプリント)として公開されており、まだ査読前の状態だ。オックスフォード大学とアストラゼネカ(AstraZeneca)のチームが最近発表したワクチン研究の結果や、モデルナの臨床試験の結果と同様、ノババックスのワクチンが新型コロナウイルスに対して長期的な予防効果をもたらすか否かについて確固たる結論を導き出すのは時期尚早だと言える。したがって、モデルナとアストラゼネカは次の段階の治験で数万人の志願者を採用し、開発中のワクチンの有効性をより明確に検証することになる。
アストラゼネカのバイオ医薬品部門を率いるメネ・パンガロスは、新型コロナワクチンは恒久的な免疫を与えるのではなく、1、2年しか効果が持続しない可能性があると警告している。世界中で150種類を超えるワクチンが開発中で、すでに25種類以上のワクチンがヒトによる治験に進んでいる。新型コロナウイルスの感染者は世界で1850万人で70万人以上が死亡していることを考えると、実行可能な解決策を見い出すことへの圧力が高まっている。ただし、政治的および国家主義的な圧力に直面しても臨床上の安全性を妥協するわけにはいかないと科学者たちは警告している。
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- シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
- 米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。