「ポスト量子」暗号をNISTが絞り込み、最有力は格子暗号
量子コンピューターの実用化は、現在の暗号化システムを過去のものにしてしまう可能性がある。米国国立標準技術研究所(NIST)が進める「ポスト量子」暗号のコンペのファイナリストが15組にまで絞り込まれた。 by Patrick Howell O'Neill2020.08.25
私たちが日々オンラインでやっていることの多くは、他人からのぞき見されないように暗号で保護されている。例えばオンライン・バンキングや友人に送るメッセージも、政府の機密と同様に暗号化されているはずだ。だが、現代の暗号化手法を無力化する量子コンピューターの開発によって、こうした保護は脅かされる可能性がある。
量子機械は、今私たちが使用している従来のコンピューターとは根本的に異なる方法で動作する。量子コンピューターは情報を0と1で表す従来の二進数ではなく、量子ビット、あるいは「キュービット(qubits)」と呼ばれるものを使用する。特異な性質を持つキュービットにより、量子コンピューターは現代の多くの暗号の基盤となっている数学的な問題をはじめ、ある種の計算において圧倒的な力を発揮する。
米国国立標準技術研究所(NIST)の数学者ダスティン・ムーディは、「研究者たちは何十年も前から、大規模な量子コンピューターが作られた場合、現在私たちが利用している暗号システムが脅威に晒される巨大な計算が可能になることを知っていました」と述べる。
量子機械が現代の暗号を破るようになるまでにはまだ長い時間がかかるが、NISTは2016年、量子に対する高い耐性を持つ暗号の新標準の開発を目的としたコンペを立ち上げた。このコンペは長期間にわたって実施されるもので、勝者は2022年に決まる予定となっている。NISTはこのほど、当初69組だった参加者を15組に絞り込んだと発表した。
現在のところ「ポスト量子」暗号へのアプローチとして、ファイナリストたちの大多数が採用しているのが「格子暗号」だ。
格子暗号の仕組み
公開鍵暗号は従来の数学を用いてデータを符号化し、鍵を持っている人、あるいはその数学を解けた人だけがロックを解除できる仕組みとなっている。格子暗号では、数千の次元に渡って存在する数十億の個別点を持つ膨大な格子を使用する。このコードを破るためには特定のポイントを1つずつ探し当てていく必要があるが、 …
- 人気の記事ランキング
-
- The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
- Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
- AI will add to the e-waste problem. Here’s what we can do about it. 30年までに最大500万トン、生成AIブームで大量の電子廃棄物
- This AI system makes human tutors better at teaching children math 生成AIで個別指導の質向上、教育格差に挑むスタンフォード新ツール