欧州連合(EU)首脳陣は7月21日、史上最も積極的な気候変動対策案を承認した。
特に目を引くのは、大規模な経済再建パッケージとEUの7年間の予算計画全体に散りばめらた、6000億ドル規模のグリーン政策だ。その全てが今世紀半ばまでに「気候中立」を目指す「欧州グリーンディール」の達成に向けられることになる。
だが、この包括的な合意は、温室効果ガス排出削減の手段が欧州の境界を超えて広く世界中に提供されることによって、資金提供以上にはるかに強力かつ議論を呼ぶであろう政策の実行に向けたスケジュールを設定したことになる。
2兆ドルの予算案合意文書には、2023年までに「炭素排出に関する国境調整措置(いわゆる国境炭素税)」を導入する提案が盛り込まれている。
最も単純な形で言えば、国境炭素税はEUの製造業者が認める以上の温室効果ガスを排出して生産された輸入品に対して、課税されるというものだ。セメント、ガラス、鉄鋼、肥料、化石燃料といった炭素集約型産業に適用される可能性がある。
戦略国際問題研究所シニアフェローのニコス・ツァフォスは「過去30年における気候変動交渉のアプローチは、自主基準と『アメ』によるものでした」と述べる。「今回は初めて『ムチ』を追加するものです」。
「行き詰まりを打開する」
国境炭素税の理屈は簡単だ。これでEUは、EU域外にも排出量の削減を要求できるようになる。地球規模での気候変動対策から逃れるために、たとえ温室効果ガスの排出量が多く安価な工法で生産可能なEU域外に生産を移したとしても対象になるからだ。さらに国境炭素税は、対策基準の低い国から流入する安価な製品から、欧州の製造業者を保護することにもなる。
カリフォルニア大学サンディエゴ校国際法・規制研究所のデイビッド・ビクター所長は、国境炭素税があることで、EUの大規模市場で自社製品を販売したいと考えるEU域外の企業が、温室効果ガス排出量の削減により積極的な措置をとることが期待できるという。さらに、ビクター所長は、それが二国間や三国間の貿易協定につながる可能性や、貿易協定によって欧州諸国と平等に取引したいと考える主要国が、同様 …