突き詰めれば、人類の火星探査への原動力は、常に我々の太陽系に存在する生命の物語を解明することであった。地球は、唯一生命体が存在する惑星なのか。これまでもずっとそうだったのか。あるいは、地球の生命体の先祖は、火星に由来しているのだろうか。米国航空宇宙局(NASA)はこれらの疑問を少しずつ解明するため、NASA史上最も野心的な試みを始めようとしている。「パーサビアランス(Perseverance)」と呼ばれるハイテク探査機を使い、火星で発見したサンプルの一部を地球に持ち帰ろうという計画だ。
7月30日に打ち上げられたパーサビアランスは、2021年の2月までに火星着陸船(ランダー)と探査車(ローバー)の小さな艦隊に加わる。この艦隊は火星の表面を詳細に観察し、さまざまな研究を実施してきた。NASAが21世紀に打ち上げた他の3台の探査車は、それぞれ「赤い惑星」である火星が以前、あるいは現在も生命体を宿している可能性を探る調査に携わってきた。しかし、それらのミッションは、火星上の水の痕跡を探り、 生命体へと発展し得る成分を調査するなど、生命体存在の可能性を巡る周辺の疑問に焦点を置いていた。一方でパーサビアランスは、この可能性に真っ向から取り組む。古代の火星において、最も居住可能性の高い地帯の1つであったと考えられるエリアで生命体を探す。
古代デルタ地帯の調査へ
パーサビアランスは火星に到着すると、直径28マイル(約45キロ)の「ジェゼロ・クレーター(Jezero crater)」に向かう。これは、38億年前から存在している湖の跡で、かつて河川がこのクレーターに流れ込んでいた。ジェゼロ・クレーターの河川デルタ(三角州)の岩の中には、生命体と関係する有機化合物や鉱物を含んでいた可能性のある沈殿物が残っている可能性が高い。
パーサビアランスのロボット・アームに搭載された、X線 …