3月にロックダウンが始まると、世界は一瞬にして異様に静かになった。街からは人が消え、公園からはジョギング愛好家や家族連れの姿が消えた。建設プロジェクトは凍結され、店は一斉に閉まった。
世界中の地震観測所のネットワークが、この前代未聞の静寂期間を数値化した。7月23日にサイエンス誌に掲載された「地震の静寂」に関する研究は、人間が環境にどれだけ騒音(ノイズ)をもたらしているかを示している。ロックダウンは、人類の足元の地球内部で起きている活動に耳を傾ける、貴重な機会を科学者に与えることにもなったのだ。
76人の論文の共著者の1人であるメキシコ国立自治大学のラファエル・デ・プラエンは、「これほど長い期間にわたって人間が静かになる現象が、現代の地震学で観察されたことはないと言っても差し支えないでしょう」と言う。
地震ノイズ、つまり地球の振動音は、地震に関連して発生することが最も多い。だが、地震学では、地球と水の相互作用にも耳を傾け、海面の膨張や気圧の変化などの現象も追跡する。
人間の活動は、地震ノイズの発生源としては3番目に大きい。通勤などの日常的な都市活動や、スタジアムを埋め尽くしたファンが一斉に熱狂して引き起こす「フットボール振動」は、地震計に記録されるほど強力だ。
ロンドンのロイヤルホロウェイ大学に所属する共著者のポーラ・コオレマイヤーは、「ノイズ源は車や電車、トラック、バスなどの交通機関です」と説明する。「小売業やレクリエーション、買い物に出かける人だけでなく公園に行く人や職場、住宅もノイズ源になります」。
通常の状況下では、人間の出すこの種のノイズが自然の地震活動の音と混ざり合い、地震活動の音をかき消す。人間の行動が背景ノイズのレベルにどれだけ影響を与えるかを正確に算出することは、今まで困難だった。ロックダウンは研究者にとって、人間の活動を制御するだけでなく、普段ならかき消されてしまう地震ノイズに耳を傾けるまたとない機会になった。
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