KADOKAWA Technology Review
×
【冬割】 年間購読料20%オフキャンペーン実施中!
ロシア、「対衛星兵器」の軌道上実験を実施か 米宇宙軍が報告
Lockheed Martin
The US says Russia just tested an "anti-satellite weapon" in orbit

ロシア、「対衛星兵器」の軌道上実験を実施か 米宇宙軍が報告

米国宇宙軍の新たな報告によると、ロシアの「査察衛星」が本来の運用目的から外れた対衛星兵器の実験をしている証拠が見つかったという。 by Neel V. Patel2020.07.28

米国宇宙軍は、最近ロシアが対衛星兵器の実験をした証拠を見つけたと発表した。何らかの物体が実験によって破壊あるいは壊された形跡は確認されなかった。宇宙軍は、7月15日にロシアの人工衛星「コスモス(Kosmos)2543」が自機の軌道上に新規の物体を射出したと主張している。この実験は、2017年に実行された前回の対衛星兵器のデモンストレーションと同様のものだという。

宇宙軍による報告と宇宙軍報道官がMITテクノロジーレビューに提供した情報によると、米国は地球低軌道上の米国政府の衛星に、ロシアのコスモス2543が「異常に接近して」いるのを発見したという。ある時点で、コスモス2543は米国の衛星から素早く離れ、別のロシア衛星と接近した後、ロシアのターゲット衛星と非常に近接する自機軌道内に小物体を射出した。この実験は、当初「査察衛星」とされていたコスモス2543の運用目的に対して「矛盾する」ものであり、実際には対衛星兵器の示威行為であると宇宙軍は述べている。

ロシアは過去数年にわたって、自国の人工衛星が適切に稼働しているか確認するためと称し、軌道上の衛星をモニターする「査察」テクノロジーの検証プログラムを実施していると説明してきた。

査察衛星は何ら違法なものではないが、米国はロシア側の説明を信用していない。ロシアはずっと以前から、対衛星兵器の可能性を示す示威行為あるいは他国の資産に対するスパイ行為の試みととれるやり方で、自国の衛星を他の物体に接近させる実験を繰り返している。今年2月には、別のロシア衛星(「コスモス2542」)がアメリカの衛星(「USA 245」)を追尾している様子に衛星専門家らが気付いた。 また2017年には、あるロシア衛星が別のロシア衛星の近傍に高速発射体を放った。米国は当時、この実験は兵器の示威行為だと述べた。

今回の報告は「宇宙空間ではどういった行動が責任あるものとみなされ、どういった行動が脅威とみなされるかの規範について、各国が合意形成しておくことの重要性を提起するものです」。セキュア・ワールド財団(Secure World Foundation)の宇宙安全保障専門家であるビクトリア・サムソンは語る。宇宙を基盤とする紛争は世界にとって全く新しい争いの場であり、脅威とみなされる行為を定義づける規則や合意は、まだほとんど形成されていない。

とは言うものの、宇宙軍の報告には不確かな点が多くある。コスモス2543が、米国の衛星や他国が運用する何らかの資産に対する差し迫った脅威となるかどうかはまだ分からない。今回発見した実験の証拠に対して米国がどのように対応しようとしているのかも不明だ。MITテクノロジーレビューに対する宇宙軍報道官のコメントには、これらの質問に対する言及はなかった。

人気の記事ランキング
  1. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 無料イベント「U35イノベーターと考える研究者のキャリア戦略」のご案内
  2. The 8 worst technology failures of 2024 MITTRが選ぶ、 2024年に「やらかした」 テクノロジー8選
  3. AI’s search for more energy is growing more urgent 生成AIの隠れた代償、激増するデータセンターの環境負荷
ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。
▼Promotion 冬割 年間購読料20%off
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る