新型コロナ第2波で死者倍増の恐れ、今冬に備えを=英専門家
英国医科学アカデミーの新たな研究によると、2020年9月から翌年6月までの新型コロナウイルス感染症関連の院内死亡者数はこれまでの2倍以上に達し、死亡者数は1月から2月にピークに達する。 by Charlotte Jee2020.07.16
今冬の襲来が予想される新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの第2波に対し、今すぐ準備をする必要がある。英国医科学アカデミー(Academy of Medical Sciences)が指摘している。新型コロナに関係なく、医療システムへの負荷は冬に高くなる傾向がある。換気の悪い室内で過ごす時間が長くなる冬は感染症が広まりやすく、気温が低いほど喘息、心臓発作、脳卒中などの症状は悪化する傾向があるからだ。
英国医科学アカデミーは新しいレポートの中で、第1波よりも深刻な新型コロナ感染者数の増加が冬に起こる可能性や、これまで後回しにされてきた新型コロナウイルス感染症以外の患者数、および最前線で働く人々の疲労を考慮に入れると、医療システムが限界を超える可能性があると警告している。
英国医科学アカデミーは英国における「起こり得る最悪のシナリオ」をモデル化した。その結果、2020年9月から2021年6月までの新型コロナウイルス感染症関連の院内死亡者数は11万9900人に達する可能性があり、英国のこれまでの死亡者数4万5000人の2倍以上になると示している。死亡者数は1月と2月にピークを迎える可能性が高いと研究者は考えている。この数値には、介護施設で発生する可能性のある死亡者の数は含まれていない。英国ではこれまでの全死者数の約3分の1が介護施設での死亡者だ。
同レポートは明確に英国を対象にしたものだが、世界中の多くの国でも同じ結論が導き出される可能性がある。ただし、これは最悪の結果を想定したモデルであり、開発される可能性のある新しい医薬品、治療法、またはワクチンは考慮されていないということは指摘に値する。また、英国で再びロックダウン(都市封鎖)措置を導入することは不可能だという想定に基づいている。
英国医科学アカデミーがまとめたこの悲惨な状況を回避するには、お互いの距離を離す(ソーシャル・ディスタンスの確保)、手洗いなどの手段を通じて市中感染を最小限に抑えることが不可欠だとレポートは述べている。さらに、医療および介護従事者向け個人用防護具(PPE)の十分な備蓄の確保、検査および追跡プログラムの強化、冬の感染拡大を監視および管理するための早期警告システムの開発、高齢者および医療従事者へのインフルエンザ予防接種も重要となる。
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- シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
- 米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。