アメリカン・ドリームを求めて集まる世界最高峰の頭脳は、機能不全に陥っている移住プロセスを我慢してくれる——。米国の政策決定者たちは、長年にわたってこうした考えに賭け、そして実際に賭けに勝ってきた。米国外で生まれた才能ある人々は、米国の大学や企業、生活様式を求めてこぞって米国の地に足を踏み入れ、可能であればそのまま永住する。
トランプ政権は今、その賭けのリスクを高いものにしている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な流行)により、特殊技能を持つ移民に対して新しい障壁を次々と打ち出すトランプ政権は、米国が才能ある外国人にとって比類なき魅力を持ち続けることを前提にしている。米国は十分に人を惹きつけることができ、どのようなことがあっても、高度なスキルを持つ労働者の国内需要を満たせると考えているようだ。だが、この賭けの成功率は低下しつつある。
移民への極めて抑圧的な動きがあったのは、7月6日のことだ。米国移民・関税執行局(ICE)は、留学生が在籍している学校が今秋から始まる新学期の授業を完全にオンライン化した場合、米国から退去しなければならないとの規制を定めたのだ(日本版注:7月14日に方針を撤回)。ICEの発表はパンデミック発生のはるか以前からあった流れに沿うものだが、その流れはこの数カ月で劇的に加速している。連邦政府当局の新しい規制、大統領令、行政指導により、移民の米国への移住手続きは、これまでより時間がかかり、高コストになり、はるかに不確実なものになっている。
米国の大学、研究機関、テック企業はこの流れを不信感を持って見ている。移民は米国の科学技術にとって不可欠な存在であり、技術的イノベーション、雇用創出、経済成長を促進し、米国民と非米国人の双方に恩恵をもたらすことはすでに明らかになっている。だからこそ、ホワイトハウスが6月に熟練労働者たちの就労ビザ発給を差し止めたことに対して、テック業界やビジネス業界のリーダーたちは怒りを露わにしたのだ。スペースX(SpaceX)とテスラ(Tesla)のイーロン・マスク創業者、人工知能(AI)の第一人者のアンドリュー・エ …