26種類の抗生物質に耐性のある細菌によってネバダ州の女性が亡くなったことは、人類が薬剤耐性菌との勝ち目のない戦いが始まっていることへの強い警告だ。
死亡したのは70代の女性で、インドで感染したと見られている。足を骨折した女性は9月に亡くなったが、この件に関して米国疾病予防管理センター(CDC)は1月13日に発表した。
インドは米国よりも抗生物質に耐性のある細菌が多い環境として知られている。また衛生状態や水質が悪いこともあって、下痢の治療のため、毎年何百万人もが抗生物質漬けにされる治療を受けており、細菌が医薬品への耐性を身につける十分な機会を与えてしまっている。
しかし、脅威は世界的だ。昨年英国政府が発表した報告書によると、対策が講じられなければ、 抗生物質に耐性のある菌が増え、2050年までにスーパー耐性菌で1000万人(がんで亡くなる人より多い)が亡くなる可能性がある。
多くの医師は、危機はすでに始まっているという。CDCのトム・フリーデン所長はスーパー耐性菌の一種である「CRE(カルバペネム耐性腸内細菌 )」を「悪夢の耐性菌」と呼ぶ。ネバダ州の女性の死因になった耐性菌はCREの一種「肺炎桿菌(クレブシエラ・ニューモニエ)」だ。
また、ミネソタ大学で伝染病を研究するジェームス・ジョンソン教授は、医療系ニュースサイトSTATの質問に答え、この状況についてさらに悲惨に評価した。「『どれぐらい警戒すべきか』とか『危険はどこまで迫っているのか』とよく質問されますが、私はこう答えます。『すでに危険なレベルに入っています』」
新しい抗生物質を開発しても製薬会社にはすぐに利益にならないことも状況を悪化させている理由のひとつだ。英国政府の報告書はこの問題に触れ、製薬会社がスーパー耐性菌に効く新たな抗生物質を開発できるように公費を投じるよう提言しているが、計画はまだ実現していない。
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