KADOKAWA Technology Review
×
【3/14東京開催】若手研究者のキャリアを語り合う無料イベント 参加者募集中
A Woman in Nevada Died From an Unstoppable Superbug

スーパー耐性菌で米国人女性死亡 26種類の抗生物質に効果なし

女性の死亡はあまり注目されていないが、抗生物質に耐性のある細菌が増えていることに警戒しなければならない。 by Michael Reilly2017.01.16

26種類の抗生物質に耐性のある細菌によってネバダ州の女性が亡くなったことは、人類が薬剤耐性菌との勝ち目のない戦いが始まっていることへの強い警告だ。

死亡したのは70代の女性で、インドで感染したと見られている。足を骨折した女性は9月に亡くなったが、この件に関して米国疾病予防管理センター(CDC)は1月13日に発表した

インドは米国よりも抗生物質に耐性のある細菌が多い環境として知られている。また衛生状態や水質が悪いこともあって、下痢の治療のため、毎年何百万人もが抗生物質漬けにされる治療を受けており、細菌が医薬品への耐性を身につける十分な機会を与えてしまっている。

しかし、脅威は世界的だ。昨年英国政府が発表した報告書によると、対策が講じられなければ、 抗生物質に耐性のある菌が増え、2050年までにスーパー耐性菌で1000万人(がんで亡くなる人より多い)が亡くなる可能性がある。

多くの医師は、危機はすでに始まっているという。CDCのトム・フリーデン所長はスーパー耐性菌の一種である「CRE(カルバペネム耐性腸内細菌 )」を「悪夢の耐性菌」と呼ぶ。ネバダ州の女性の死因になった耐性菌はCREの一種「肺炎桿菌(クレブシエラ・ニューモニエ)」だ。

寒天培地で培養したクレブシエラ・ニューモニエ

また、ミネソタ大学で伝染病を研究するジェームス・ジョンソン教授は、医療系ニュースサイトSTATの質問に答え、この状況についてさらに悲惨に評価した。「『どれぐらい警戒すべきか』とか『危険はどこまで迫っているのか』とよく質問されますが、私はこう答えます。『すでに危険なレベルに入っています』」

新しい抗生物質を開発しても製薬会社にはすぐに利益にならないことも状況を悪化させている理由のひとつだ。英国政府の報告書はこの問題に触れ、製薬会社がスーパー耐性菌に効く新たな抗生物質を開発できるように公費を投じるよう提言しているが、計画はまだ実現していない。

(関連記事:STAT, “It’s an Evolutionary Arms Race, and the Superbugs are Winning”)

人気の記事ランキング
  1. AI crawler wars threaten to make the web more closed for everyone 失われるWebの多様性——AIクローラー戦争が始まった
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 好評につき第2弾!研究者のキャリアを考える無料イベント【3/14】
  3. From COBOL to chaos: Elon Musk, DOGE, and the Evil Housekeeper Problem 米「DOGE暴走」、政府システムの脆弱性浮き彫りに
  4. What a major battery fire means for the future of energy storage 米大規模バッテリー火災、高まる安全性への懸念
  5. A new Microsoft chip could lead to more stable quantum computers マイクロソフト、初の「トポロジカル量子チップ」 安定性に強み
マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。
▼Promotion
U35イノベーターと考える 研究者のキャリア戦略 vol.2
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る