ロボットやAIで仕事がなくなるのは5%とマッキンゼーが予測
作業の自動化は必然だが、予測できる範囲の未来で、人間は機械と協働するほうが経済的メリットがある。 by Jamie Condliffe2017.01.16
自動化が労働市場に影響を与えていることはわかっているが、自動化による将来の影響がどれだけ早く劇的かについては、さまざまな予測がある。ところが新しい報告によると、事態は一部の予想よりずっと緩やかに進みそうだ。
先月、フォックスコンの一部の工場で製造現場のほぼすべての人員をロボットに置き換える計画が伝えられた。日本の富国生命保険のニュースには事務系の労働者が不安になっただろう。フコク生命は、人工知能が人間と同等に給付額を計算できることから30人以上の人員を削減しようとしている。近い将来、現在人間が担っている仕事のほとんどはロボットに置き換わるとアメリカ人の3分の2が信じているのも無理はない。
しかし、コンサルタント会社マッキンゼー・アンド・カンパニーの研究部門であるマッキンゼー・グローバル・インスティチュート(MGI)が発表した自動化と雇用、生産性に関する研究によると、自動化が労働人口に影響を及ぼすペースは、予想よりもあまり激しくないという。また、予測可能な将来において、人間がロボットとともに働くことで経済的にはメリットがある、とこの研究はみなしている。
自動化できるのは作業であって仕事全体ではないため、マッキンゼーは役職名ではなく仕事を作業に分割して分析している。つまり経営幹部でさえ、仕事の一部はロボットで代替可能なのだ。
研究結果は、現在の労働活動の半数が2055年までに自動化されることを示している。ただし研究結果は、すべての仕事の60%では、そのうち30%の作業が機械に置き換わりうる一方で、完全に自動化される仕事は5%だけとしている。つまり、この分析によれば、今後40年間でほとんどの仕事は変化し、最悪の場合には縮小するが、仕事そのものはなくならないのだ。
この研究は、仕事の未来に関する他の予測とはいくらか対照的だ。オックスフォード大学のカール・ベネディクト・フレイ研究員とマイケル・オズボーン准教授による予測がおそらく最も憂鬱だ。ふたりの分析によると、今後20年間で米国の仕事の47%が自動化の危機にさらされるという。
研究報告の著者であるMGIのジェームス・マニイカ支局長(サンフランシスコ)はニューヨーク・タイムズ紙の取材に答えて、なぜロボットによる仕事の置き換えが他の予測よりも遅くなると証明できるかについて説明している。「技術的に可能かどうかだけにテクノロジストは注目しがちですが、それだけで自動化が雇用にどう影響するかは決められません」
実際、マッキンゼーの報告書は自動化で経済的メリットを得るには、当面は人間とロボットが協働することになる、と論じている。ロボットとAIによる労働で効率を高め、人間も働き続けるなら、世界の生産性は0.8%上昇しうるとマッキンゼーは考えており、人間はまだ生活する必要がある。仮に人々が働かずに給付金を得るようになれば、経済的メリットはあっという間に消えてしまうという考えは、MIT Technology Reviewが検討したとおりである。
ただし、人間の仕事が徐々に機械に置き換わっていく一方で、人間の新しい仕事をどう見つけるのかについて、マッキンゼーの報告書は検討していない。レポートは単に人間は新しい仕事を見つけなくてはならない、と述べているだけだ。つまり、雇用に関する不安は目の前から消えていない。とはいえ、こうした不安を乗り越えるための時間は、思ったよりも少しだけ長いようだ。
(関連記事:A Future That Works, The New York Times, “How Technology Is Destroying Jobs,” “China Is Building a Robot Army of Model Workers,” “ベーシック・インカム:ネット世論頼みの危うい正義感”)
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