KADOKAWA Technology Review
×
【3/14東京開催】若手研究者のキャリアを語り合う無料イベント 参加者募集中
新型コロナ、空気感染の恐れ 科学者らがWHOに対策見直しを要請
Getty
A group of 239 scientists say there’s growing evidence covid-19 is airborne

新型コロナ、空気感染の恐れ 科学者らがWHOに対策見直しを要請

科学者グループがWHOに送った公開書簡で、新型コロナウイルス感染症は空気感染する可能性があると主張している。 by Charlotte Jee2020.07.08

32カ国239名からなる科学者グループが、世界保健機関(WHO)に公開書簡を送り、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は空気感染する可能性があると主張している。そのことはすでに知っていると思うかもしれないが、現在されている指導は、新型コロナウイルス感染症は感染者の鼻や口から吐き出された飛沫(小滴)を介して伝染するという考え方に基づいている。呼吸による大きなしずくはすぐに床に落ちるという考えだ。これはWHOがパンデミックの初期から取ってきた立場であり、だからこそ私たちはお互いに距離を保ってきた。

だが、公開書簡に署名した科学者らは、ずっと小さな飛沫(エアロゾルと呼ばれる)が空気中を浮遊し続けることで起こる空気感染をWHOは甘く見ていると言う。エアロゾルは飛沫よりも遠くまで移動し、感染者が立ち去った後でもそこに滞留し続ける。

書簡によると、複数の研究により、「合理的な疑いの余地なく、ウイルスが空気中に高く浮かび続けるのに十分小さな微小滴の形で、息を吐く、会話する、咳をするなどの際に放出されることが実証された」という。さらに、この微小滴は「感染した個人から1メートルから2メートル以上離れた距離でも曝露のリスクをもたらす」としている。米国立衛生研究所(NIH)が実施した初期の臨床検査では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はエアロゾルの形で空気中に最大4時間滞留できることが判明した。4月にネイチャー(Nature)誌で発表された調査報告書によると、中国の武漢にある2つの病院で収集されたエアロゾルからも新型コロナウイルスが検出された。さらに、スーパー・スプレッダーの事例からも、証拠の重みが増す。たとえば、米国では、合唱の練習をした後、安全な距離を保っていたにもかかわらず、50名近くが感染してしまった事例がある。

もし空気感染がウイルスの拡散経路であるなら、現在の助言に変更を加える必要性が出てくる可能性がある。社会的距離戦略が、特に屋内では不十分かもしれないことを示しているからだ。となると、家族以外の人々と屋内で会う際には、いよいよマスクを装着することが重要になるだろう。たとえ距離を取っていても、閉鎖空間の換気を十分に実施していてもだ。空気の再循環を減らそうとするなら、空気清浄機がより重要になる可能性がある。新型コロナウイルス感染症患者を治療する医療従事者は、最小の飛沫を除去するために最高品質のマスク(N95)が必要になるかもしれない。

(関連記事:新型コロナウイルス感染症に関する記事一覧

人気の記事ランキング
  1. One option for electric vehicle fires? Let them burn. EV電池火災、どう対応?「燃え尽きるまで待つしかない」と専門家
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 好評につき第2弾!研究者のキャリアを考える無料イベント【3/14】
  3. One option for electric vehicle fires? Let them burn. EV電池火災、どう対応?「燃え尽きるまで待つしかない」と専門家
シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。
▼Promotion
U35イノベーターと考える 研究者のキャリア戦略 vol.2
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る