トランプ大統領は6月22日、各種就労ビザの発給を一時停止する大統領令に署名した。だが、それ以前にも米国はすでに、世界的なテック移民のトレンドに抗っていた。過去5年間、他国が高度なスキルを持つ技術者に門戸を開放する中で、米国は自国の移民政策を維持するだけで、制限すらしていた。そしてそのことが、テック人材の国内需要を満たすボトルネックとなっていた。
トランプ大統領の就労ビザ発給停止の決定に、多くの政策アナリストは懸念を抱いている。この政策が長期的に米国のイノベーションに与える影響を懸念しているのだ。特に「H-1B」と呼ばれるビザ発給の一時停止が、人工知能(AI)といった重要なテクノロジーにおける米国の優位性に及ぼすインパクトは大きいと考えられる。H-1Bは専門分野の外国人労働者に付与される3年間の就労ビザで、高度に熟練したテック労働者が米国の労働力に加わるための主要なチャネルの1つになっている。
「米国の主要な競争相手は別の方向に進んでいます」。ジョージタウン大学セキュリティ&エマージング・テクノロジー・センター(CSET)のリサーチアナリストであるティナ・フアンは話す。「歴史的に、米国は他国の才能に依存して自らの技術的優位性を促進してきました。そのことを主要な競争国は認識しています」。米国の競合国がこの絶好のチャンスを利用し、これまで以上に寛大でスピーディにビザを取得できる移民政策によって、人材を米国から自国へと引き付ける賭けに出る可能性は高いとフアンは述べる。
外国人の米国での就労を禁止するトランプ大統領の動きは、米国民の雇用を守るという政権の広範な雇用促進策の一環だ。決定に至るまでの数か月間、スティーブン・ミラー大統領上級顧問は、パンデミックによって引き起こされた景気後退が移民の流れを食い止める必要性を …