アマゾンは、温室効果ガスの排出削減技術を開発する企業に投資する20憶ドルのベンチャーファンドを立ち上げた。気候変動対策に大規模なリソースを割く同社にとって最新の取り組みだ。
アマゾンのプレスリリースによると今回の新ファンドは、同社をはじめとする企業が2040年までに温室効果ガスの排出量「実質ゼロ」を達成するのを後押しするスタートアップ企業を対象とする。運輸、エネルギー生成、エネルギー貯蔵、製造業、材料、農業など、幅広い業界に投資していくという。
シアトルに拠点を置く巨大小売企業のアマゾンに対しては、世論および自社の従業員から、地球温暖化の危機が深刻化する中で環境への負荷を削減するよう圧力が高まっている。昨年9月には同社の社員数百人がオフィスを後にし、同月開催の国連気候行動サミットに先駆けて国際的な気候ストライキに加わった。アマゾンに対してより積極的な対策をとるように訴える取り組みの一環であった。
その数日後、アマゾンは2040年までの排出「実質ゼロ」達成に取り組むと宣言した。この宣言は、同社が森林再生や、二酸化炭素回収装置といった二酸化炭素削除計画への投資を通じ、企業運営から発生する温室効果ガス排出を相殺する必要があることを意味する。2020年2月には、世界有数の大富豪であるジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が、気候変動対策に取り組む科学者、活動家、非政府組織(NGO)に個人資産100億ドルを寄付すると発表した。
アマゾンの発表は、シアトルに拠点を置く別の巨大テック企業の後を追う形となっている。2020年に入ってマイクロソフトは、創業当初から取り組んできた温室効果ガス排出相殺の一環として、「二酸化炭素削減、回収、除去テクノロジー」に10億ドル投資すると発表している。2016年には、同社の共同創業者であるビル・ゲイツが自然エネルギーのスタートアップ企業を支援する10億ドル規模のファンド、ブレイクスルー・エネルギー・ベンチャーズ(BEV:Breakthrough Energy Ventures)を設立した。
クリーンテクノロジーへの投資が増えるのはいつでも歓迎すべきニュースである。しかしアマゾンの温室効果ガス排出量は昨年の段階で15%増加して5000万トンを超えており、削減にはさまざまな取り組みが必要だ。また、植樹など温室効果ガス排出相殺の取り組みは永続性や効果が不確実であり、企業による排出相殺を二酸化炭素除去計画に依存するとなれば大きな問題が生まれることになる。
さらに識者からは、昨年の収益が約120億ドルで、約300億ドルの手持ち資金を抱えるアマゾンであれば、気候変動問題に対し、20億ドルをはるかに超える額を難なく投資できるはずだという指摘がある。正しい指摘と言えるだろう。