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トランプ対バイデン
似ているようで微妙に異なる
大統領候補のアプリ戦略
Ms Tech | Wikimedia, Unsplash
カルチャー Insider Online限定
Trump’s data-hungry, invasive app is a voter surveillance tool of extraordinary power

トランプ対バイデン
似ているようで微妙に異なる
大統領候補のアプリ戦略

2020年の米大統領選挙のデジタル戦略の柱となっているのが、スマホアプリだ。トランプ、バイデンの両陣営とも専用アプリを支持者にダウンロードさせ、データを収集しているが、両者の戦略には違いがある。 by Samuel Woolley2020.10.26

2020年の米国大統領選挙で再選を目指すトランプ大統領の選挙集会がオクラホマ州タルサで開催される数日前、トランプ陣営のブラッド・パースケール選対本部長(当時)が、集会の「チケットの予約が80万枚を越えました」とツイートした。「史上最高、桁外れのデータ収集量と選挙集会の参加予約数です。土曜日はすごいことになります!」とパースケール本部長は続けた。

集会は当初予定されていた6月19日(奴隷解放記念日)から20日に変更されたものの、99年前に米国史上最悪の黒人大量虐殺事件が起きた現場からほんの数マイルしか離れていない会場は変わらなかった。だが、集会当日はわずか6200人しか集まらず、パースケール本部長がツイートした集会の参加予約数に非難が集まった(編注:同本部長はその後更迭され、辞任した)。十代の若者やK-POPファンのいたずらによって参加登録数が増加したと言われているが、そのような事情を考慮しなくても、パースケール本部長の主張は理解に苦しむものだった。会場の収容人数はわずか1万9000人なのに、選対はなぜそんなに多くのチケット予約登録を受けつけたのか?

その手がかりは、パースケール部長がツイートで使った「データ収集量」という言葉にある。

データ収集とターゲットを絞り込んだオンライン・メッセージ送信は、2016年米国大統領選挙における中心的な戦略だった。2020年大統領選でも再び中心的な戦略だが、その手法には変化が起きている。テキサス大学オースティン校メディア・エンゲージメント・センター(Center for Media Engagement)にある筆者らのプロパガンダ研究チームによると、2016年米大統領選挙の特徴がフェイスブックを使って候補者が有権者に連絡を取り、投票するように説得したとすれば、2020年大統領選挙の特徴はカスタムメイドの選挙運動アプリの使用が中心になっている。トランプ大統領とバイデン前副大統領の選対チームは、アップストア(App Store)とグーグル・プレイストアで配布される専用アプリを使い、投票が見込める有権者に直接訴える戦略だ。膨大な量のユーザー・データの収集を可能にし、主要ソーシャルメディア・プラットフォームに依存する必要もなければ、ユーザーを欺くようなメッセージや、国民を分断するようなメッセージでもファクトチェックという監視を受ける必要もない。

公式アプリ「Trump 2020」はデータを収集して誤情報を広める

測定サービス企業アポットピア(Apptopia)によると、4月中旬にリリースされたトランプ陣営公式アプリ「トランプ2020(Trump 2020)」は6月時点で約78万回ダウンロードされている。

トランプ2020には「ニュース」タブと「ソーシャル」タブがある。選挙の論点を補強するツイートのフィードや記事を厳選して提供し、極めて疑わしい情報や完全に誤った情報で積極的にユーザーを欺くことも多い。その見出しの例を挙げると、「明らかに間違っている催涙ガスの空論を広め続けるメディア」「マスクを着用していないと批判するメディア関係者がマスクを着用せず」「ジョー・バイデンの恥ずかしいほど悲惨で、ひどく退屈なライブ・ストリーミング厳選8シーン」などだ。このアプリ内のメッセージ、記事、通知のほとんどに、作成者の名前は記されていない。政府の報道発表やトランプ大統領支持者、ホワイトハウス職員が発したツイート以外、情報源が示されることは滅多にない。このアプリでは、ツイッターやスナップチャット(Snapchat)などのソーシャルメディア企業を、明かにバイアスがあり透明性が欠けていると激しく非難し、ソーシャルメディア企業を攻撃するキャンペーンも始めている。その一方、自分たちは不透明で、とにかく目を引くことを優先する戦略を採用している。

パースケール本部長のコメントが示すように、トランプ2020の最も強力な役割はおそらくデータ収集だ。アプリの利用開始時に、ユーザーは認証コードを受け取るための電話番号の登録を要求され、さらにフルネーム、電子メールアドレス、郵便番号を提供する必要もある。既存の連絡先とのアプリ共有を強く勧められる。これは、トランプ大統領の再選を支援すると見込まれる4000万人から5000万人の有権者を確保するための選挙戦略の一環だ。トランプ選対はトランプ大統領に投票する可能性のある有権者全員の携帯電話番号を収集するのが目的だと明らかにしており、戦略には位置データ、電話ID、携帯電話のBluetooth設定などへの広範なアクセス許可の要求も含まれる。

トランプ2020は、すでに批判を集めており、とりわけセキュリティ研究者によって、アプリの脆弱性によってハッカーがユーザー・データにアクセスできることが発見されている。この批判への対応で、トランプ選対の優先事項が明らかになった。バグが明らかになるとトランプ選対はすぐに修正したものの、同時に、収集できるデータ量を最大限に拡張したのだ。選対は部外者に対してユーザー情報を無防備なまま放置したくはないが、できる限り多くの有権者データを収集したいと考え、そして都合の良い方法でユーザー情報を利用するだろう。

トランプ2020は、プライバシー改善のために仕様変更された部分を含まない、アンドロイドの旧バージョンでコンパイルされていることが我々の調査で判明している。また、トランプ2020は人々の位置情報やランプ陣営との関係性を収集していることで知られるファンウェア(Phunware)のソフトウェアを使用している。昨年、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の調査でトランプ大統領の選挙運動でのファンウェアの役割が浮き彫りになった。ファンウェアは最近、中小企業の新型コロナウイルス対策の支援を目的とした米連邦融資プログラムで数百万ドルを受け取るため徹底的な監視下に置かれている。5月にナスダックは、ファンウェアが上場廃止基準に抵触する可能性があるとの書類を提出した。プライバシーを侵害して個人情報を収集し、有権者を確保するファンウェアの戦術は、ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)と比較されている。

公式アプリ「Team Joe」が重視する連絡先リスト

ジョー・バイデン前副大統領の選対が開発した公式アプリ「チーム・ジョー(Team Joe)」は、表面的にはトランプ大統領の公式アプリと類似している部分もあるが、目的は大きく異なる。チーム・ジョーには、選挙集会やデジタル選挙活動をする人を対象とした講習会の通知を送信するなど、トランプ大統領の公式アプリと共通する機能がある。しかし、トランプ大統領の公式アプリの用途は個人向けにカスタマイズされた選挙メッセージの拡散から選挙集会のライブ・ストリーミングまで幅広いが、チーム・ジョーは主に1つの目的「関係性の組織化」のために構築されている。この概念は、デジタル選挙活動に役立つ情報を発信している、チーム・ジョー・デジタル・ツールキット(Team Joe Digital Tool Kit)で詳しく説明されている。

「関係性の組織化とは、我々が支援するジョー・バイデン大統領候補の支援活動で、ボランティアが既存 …

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