米国政府の科学顧問は、気候変動対策としてジオ・エンジニアリング(地球工学)の研究を連邦政府として資金援助するよう、初めて議会に要請した。
地球工学を検討することへの姿勢変更は、米国地球変動研究プログラムが今週初めに発行した、連邦政府の気候研究補助金の最新計画書に記載されている。報告書では、地球工学の研究により「気候変動への干渉や地球工学で可能な方法を理解するために必要な科学的知識と、地球工学的手法を実施することで生じる意図的または意図的でない結果」が判明するかもしれないと記載している。
気候変動に対する地球工学的対策は主にふたつある。ひとつは、大気圏から二酸化炭素を回収して、温暖化効果を削減することだ。もうひとつは、地球が反射する日光を増やすことだ。新計画では、どちらの方法も調査するよう提案している。
人工的手法で気候変動の効果を緩和するアイデアは以前にもあった。多くの科学者が支持しているが、問題があることもわかっている。懐疑的に見れば、地球工学的手法の大規模実験にどんな効果があるか誰にもわからず、軽率な実施にはリスクがある。
2015年の全米科学アカデミーの報告書では、地球工学は温室効果ガスの影響を部分的に緩和するだけで、別の問題の原因になりうると警告されていた。だが同時に、 効果を評価するために地球工学テクノロジーを試験するための実験手法を開発するよう呼びかけている。現在、ホワイトハウスの科学顧問もこの方針に同意しようとしている。
一方、サイエンス誌が懸念しているとおり、地球工学的方法を進めると決断すれば、トランプ新政権が二酸化炭素排出量の削減を進めない口実になる。大気圏から二酸化炭素(CO2)を回収して日光を反射させれば、理論上、化石燃料の燃焼を止める必要があるのか、となりかねない。
新しい報告書は、この問題については非常に明解だ。「気候変動への介入は、温室効果ガス排出量の削減や、すでに発生している気候変動に適合する対策の代用にはならない」としている。ただし「検討中の気候介入手法のいくつかは、いつかは気候変動に対処する手段を構成するひとつにはなりえる」とも記している。
(関連記事: The New York Times, Science, “Scientists Suggest Testing Climate Engineering,” “A Cheap and Easy Plan to Stop Global Warming,” “Geoengineering Could Be Essential to Reducing the Risk of Climate Change”)