新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴うロックダウン(都市封鎖)中に、友人や隣人、他の家族と一緒に生活することで、多くの人々、特に独り暮らしの人が、新型コロナウイルス感染症を広めることなく隔離生活を緩和する方法を模索している。ネイチャーに6月4日付けで掲載された新たなコンピューター・シミュレーションによると、「バブル(bubbles)」と呼ばれる集団生活が、実際にうまくいく可能性があるという。
世界各国でロックダウンの解除や解除の準備が進む中、新型コロナウイルス感染症の第2波を起こさずに他人と交流する方法が求められている。公衆衛生上の懸念点と、社会的・心理的・経済的な関わりの必要性とのバランスを取る方法が必要だ。
具体的な方法は明確ではない。医療関係者は、隔離生活のほか、家族以外との接触をできる限り避けることや、他人との距離を2メートル取ることなどを推奨している。だが、こうした社会的距離戦略(ソーシャル・ディスタンス)の効果についての研究はほとんど進んでいない。これまでの研究は主に、旅行の禁止や集会の中止、学校の閉鎖といった広範囲の制限の効果について調べており、個人間の社会的交流については詳しく調査されていない。
英国オックスフォード大学と人口統計学レバーヒューム・センター(Leverhulme Centre for Demographic Science)に所属する社会学者のパー・ブロックが率いるチームが、3種類の異なる社会的距離戦略のシミュレーションを実施した。その結果、いずれの対策でも一定のルールさえ守れば、感染症の拡大を比較的低く抑えながら社会的な交流を広げられることが示された。
第1の方法は、近隣の住民や同じ年齢層といった共通要素のある人同士だけを交流させるものだ。研究チームによると、この方法で従業員をまとめることで、企業活動の再開時に感染拡大のリスクを抑えられる可能性があるという。第2の方法は、全員が顔見知りの友人グループなど、すでに強い社会的つながりのある集団の中で生活することだ。
第3の方法は、各集団が独自の社会的サークルを選択し、全員がその中に留まるようにする「バブル化(bubbling)」だ。3つの方法はいずれも、会う人の数は減るものの異なる集団の人とも接触するランダムな社会的距離戦略よりも、感染抑制に効果的だった。しかし今回のシミュレーションによると、最もよい結果となったのが、バブルだ。感染率のピークを37%遅らせ、ピークの高さを60%減らし、全体の感染者数も30%減少させる結果になった。2番目に効果があったのは、共通要素がある人々に集団を制限する第1の方法だ。
研究チームは、バブルがうまく機能するのは、バブルが簡単に壊れやすい社会的・地理的なつながりよりも、交流するまたはしない相手を意図的に選択しているからではないか、と指摘している。
ただし、シミュレーションと現実は異なる。研究チームは手始めに、500~4000人という比較的小規模なネットワークをモデル化した。だが、規模によって戦略の有効性にそれほど大きな違いは見られなかったことから、はるかに大規模な人口でも結果が当てはまる可能性は示されている。大衆へのメッセージの打ち出し方の問題もある。社会的距離戦略はできるだけ単純な指針が示された場合に最大の効果を発揮する。複雑なルールでメッセージを分かりづらくしてしまうと、現実ではあまりうまくいかない可能性がある。
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