IL-6阻害薬、新型コロナ死亡率下げる可能性=ミシガン大学
ミシガン大学によると、人工呼吸器を装着した患者にインターロイキン-6(IL-6)を阻害する抗体医薬品を投与した場合の死亡率は、投与しなかった場合に比べて45%低かったという。 by Antonio Regalado2020.06.09
ミシガン大学の研究によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の克服に向けて、人工呼吸器を装着した患者の死亡率をある抗体医薬品が大幅に下げる可能性があるという。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起こり、世界中で何百万人もの感染者が出ている。集中治療室(ICU)に送られ、人工呼吸器を装着する段階に至った患者の半数以上が亡くなっている。
ミシガン大学の医師らは、新型コロナウイルス感染症の患者を死のスパイラルに導く要因の1つである、免疫反応の暴走(サイトカインストーム)を制御する方法の研究に着手している。その方法とは、人工呼吸器をつけた78人の患者に、感染への反応を引き起こす体内分子であるインターロイキン-6(IL-6)を阻害する抗体医薬品であるトシリズマブ(tocilizumab)を投与するというものだ(この薬はロシュから「アクテルマ(Acterma)」の商品名で販売されている)。
ミシガン大学の医師らが執筆した査読前論文(プレプリント)によると、薬を投与した患者の死亡率は、薬を投与しなかった患者に比べて45%低かったという。ただし、この結果における大きな注意点は、医師がどの患者に薬を投与し、どの患者に投与しないかを選んでいたという事実だ。つまり、投与するグループの患者を医師が選ぶ際に何らかのバイアスがあった可能性がある。たとえば、薬を投与したか否かに関わらず回復する見込みのある患者が選ばれやすかったことも考えられるため、さらなる研究が必要だ。
ロシュは 5月下旬、自社のIL-6阻害薬と抗ウイルス剤である「レムデシビル(Remdesivir)」を組み合わせて投与する治験を開始すると発表した。ウイルスの複製を阻止する医薬品であるレムデシビルは、新型コロナウイルス感染症の治療にある程度の効果が認められ、米国では緊急承認を得ている。
この2つの薬を組み合わせて投与することで、新型コロナウイルス感染症による死亡率を下げる治療法を確立できるかもしれない。これは、社会が正常に戻るのに役立つステップでもある。
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- MITテクノロジーレビューの生物医学担当上級編集者。テクノロジーが医学と生物学の研究をどう変化させるのか、追いかけている。2011年7月にMIT テクノロジーレビューに参画する以前は、ブラジル・サンパウロを拠点に、科学やテクノロジー、ラテンアメリカ政治について、サイエンス(Science)誌などで執筆。2000年から2009年にかけては、ウォール・ストリート・ジャーナル紙で科学記者を務め、後半は海外特派員を務めた。