米国のドナルド・トランプ大統領は5月26日、郵便投票について誤解を招くツイートをした(郵便投票は「実質不正」であるとし、「不正な選挙」につながると発言)。ツイッターがそのツイートにファクトチェック(事実確認)を促すラベルを付けた2日後、トランプ大統領はユーザーコンテンツを管理するソーシャルメディア企業の保護を弱めることを目的とした大統領令に署名した。
米国保守層は長い間、ソーシャルメディア企業が保守派の政治的見解に偏見を抱いていると主張している(実際にはその根拠となる確固たる証拠はない)。トランプ大統領はその主張を後押ししており、かつてソーシャルメディア企業に対して規制、もしくは罰則を科す可能性を示唆したこともあった。
今回の大統領令は、1996年に成立した米国通信品位法の第230条を対象としている。第230条は、インターネット企業がコンテンツを管理する方法に大きな裁量権を与え、ユーザーによって作成されたコンテンツに対するネット企業の法的責任を免除するものだ。大統領令の初期草案によると、今回の大統領令により、連邦通信委員会(Federal Communications Commission:FCC)は通信品位法230条の適用方法の再検討を迫られる可能性がある。トランプ大統領いわく今回の大統領令は、「政治活動を検閲しているソーシャルメディア企業を免責できないような」規制を求めるものだという。さらに、「言論の自由を抑圧するソーシャルメディア企業」に「市民の税金」が流れないように連邦機関に指示するものでもあるとも述べている。大統領が実際に署名した命令の中身は現時点で不明だ。
トランプ大統領の発言は、ソーシャルメディア企業(特にツイッター)に対する大統領自身の不満を再度表明したものだ。トランプ大統領はツイッターを閉鎖させるとほのめかしたが、その実現には法的なハードルがある。そこで、自身に対するメディア報道が好意的なものになるなら、「@realDonaldTrump」のアカウント(トランプ大統領の個人アカウント。フォロワー数は8000万)を「ただちに」閉鎖すると補足した。また、政権として連邦議会での立法を求め、大統領令が訴訟のきっかけになることを期待するとも述べた。
現在の社会情勢をより反映させるために通信品位法第230条を改正することについては実際に党派を超えた支持があるが、トランプ大統領の今回の大統領令には大きな疑問符がつきまとう、というのが専門家の見方だ。ニューヨークにあるセント・ジョーンズ大学法科大学院のケイト・クロニック教授は、今回の大統領令は基本的に「政治劇」的な意味合いを持つものであり、25年間の判例に真っ向から反するものであるとナショナル・パブリック・ラジオ(NPR、米国の非営利・公共ラジオ局のネットワーク)に語った。