アップルとグーグル、接触者追跡APIを提供開始 世界22カ国で採用
グーグルとアップルは、スマホを利用して新型コロナウイルス感染者を追跡するテクノロジー(API)の提供を開始した。各国政府は、独自の接触者追跡アプリを開発・配布できるようになる。 by Patrick Howell O'Neill2020.05.25
アップルとグーグルが、「曝露通知」テクノロジーの提供を開始した。世界の保健当局が取り組んでいる、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大防止に期待されているテクノロジーだ。今後、両社が承認した各国政府が、この技術を利用した独自の接触者追跡アプリをそれぞれ開発・配布できるようになる。
ウイルス感染者に接触した可能性のある人を追跡する「接触者追跡」は、エボラ出血熱からHIVに至るまで感染爆発との戦いで使われ、成功を収めてきた実証済みの重要な戦略だ。ここ数カ月、多くの国がスマホアプリをはじめとするさまざまなテクノロジーを駆使してパンデミックの拡大を抑え込もうとしている。
すでに20数カ国で独自の接触者追跡アプリがリリースされているが、アップルとグーグルの今回のリリースでこの流れは飛躍的に加速しそうだ。両社の協力体制により、世界中のほぼすべてのスマホが互いを検出し、新型コロナウイルスに曝された可能性に関する情報を共有できるようになる。独自のシステムを開発している国は、技術的な問題と人権擁護の問題の両方に直面しているが、アップルとグーグルのプロジェクトはその両方を解決できるだろう。
規模が重要
両社によれば、5月20日時点で5大陸22カ国の政府および米国の複数州に対して、接触者追跡アプリ用API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)へのアクセスを許可した。これらプロジェクト参加国の住民は合計で数十億人となるが、参加していない国もある。中でも目立つのが、APIの仕組みについてグーグル・アップルと意見が対立しているフランスと、接触者追跡に対する独自の取り組みで両社のシステムを使うかどうかをいまだに検討中の英国だ。
グーグルとアップルによる接触者追跡テクノロジーは、世界的な危機の最中にシリコンバレーの力と影響力を示す形となった。 ヨーロッパ、アジア、北米の当局は位置情報追跡を許可するように、あるいは中央集権的システムを構築するようにとグーグルとアップルに迫ったが、両社は強硬な姿勢を崩すことなく勝利を収め、プライバシー優先の非中央集権型追跡システムを構築した。このシステムは、複数層の同意を要求し、位置情報追跡の代わりにBluetooth信号を使用しており、古い携帯電話利用者の信頼性を高めることが意図されている。
「私たちが構築したのはアプリではありません。公共保健当局がそれぞれ独自のアプリにAPIを組み込み、そのアプリを人々がインストールする仕組みになっています」。アップルとグーグルは5月20日の声明でこう述べている。「私たちのテクノロジーは、そのアプリをより良く機能させるように設計されています。個々のユーザーには、曝露通知を選択するかどうかの決定権があります。システムがデバイスから位置情報を収集したり、デバイスの位置情報を利用したりすることはありません。新型コロナウイルスに感染していると診断された場合、感染の事実を公共保健当局のアプリで報告するかどうかは、感染者の判断に委ねられます。接触者追跡アプリ成功の鍵を握るのはユーザーに使ってもらえるかどうかであり、強力なプライバシー保護策がこの種のアプリの利用を促す最善の方法でもあると考えています」。
グーグル、アップルとも、各国でパンデミックが終息すれば、追跡テクノロジーの提供を終了するという。
接触者追跡テクノロジーは、パンデミックの規模拡大への対処に役立ち、世界中の経済活動再開のプロセスの一環になるかもしれない。しかし、疫学者やテクノロジストは、アプリだけでこの問題を解決したり、解決を先導したりすることはできないという点で広く同意している。接触者追跡では、通常、過酷な仕事の多くを人間が担う必要があり、専門家によれば米国では10万人以上の追跡担当者が必要になるという。
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