10億ドルは大金だろう。しかし、がん検査のスタートアップ企業グレイル(Grail)ほどの大きな野心では、この額でも足りないくらいだ。
元グーグル社員でグレイルのジェフ・フーバーCEOが説明するように、グレイルの目標は「すべての主要ながんの種類を特定する検査手法」を確立することだ。グレイルは、DNAシーケンシング企業のイルミナや多くの著名テック企業からすでに1億ドルの資金を調達しているが、現金残高の桁に0がもうひとつ加われば、グレイルの高い目標が手の届く所にまで近づくと考えている。グレイルは先週木曜日の発表で、10億ドルの資金調達を計画していること、投資家から「関心の表明(IoI:Indications of Interest)」(投資する意思を表明すること)があったこと、迅速に行動することで、多額の資金注入を確保すること、を明らかにした。
グレイルの成功は、新興テクノロジーである「リキッド・バイオプシー」を劇的に拡大させる能力がグレイルにあるかどうかにかかっている。リキッド・バイオプシーは、人間の血液からDNAをシーケンシングし、がんの存在を明確に示す断片を探す際に有効な手法だ。リキッド・バイオプシーの有効性を最初に示した人物のひとりである香港出身の盧煜明(デニス・ロー)医師はかつて、母親の血流から胎児のDNAを検出するためにリキッド・バイオプシーを利用していた。リキッド・バイオプシーは、より安全なダウン症候群のスクリーニング検査につながり、現在広く利用されている。
盧医師はリキッド・バイオプシーを肺がんと鼻咽腔がんを発見する方法として試し、有望な結果を得た。しかし、リキッド・バイオプシーをすべてのがんに適用できるかのような期待を、盧医師は強く戒めている。
約1年前にイルミナから独立したグレイルは、リキッド・バイオプシーによってがんを早期に発見できるのか、また、他のスクリーニング検査以上に信頼できるのかを確認するという、自社の最初の課題に取組んでいる。
フーバーCEOも、乗り越えるべき山があることは自覚しているようだ。フーバーCEOが大腸がんで妻を亡くしてから、グレイルの使命は非常に個人的なものとなった。がんは進行に伴い急速に変異し、ある種類から別の種類に大きく変化するため、がんDNAの検知は困難になる得ることをフーバーCEOは認めている。フーバーCEOによると、がんのDNAのライブラリーを作成するために、グレイルは何万人もの被験者のDNAシーケンシングに頼ることになるという。ライブラリーを作成すれば、その後でコンピューターで解析できる。
しかし、がんとの戦争において形勢を一変させる崇高な話題の先には、よりひねくれた状況の見方がある。グレイルがイルミナのひとつの部署であった時、遺伝子配列装置の新市場を創設するには、グレイルは費用のかかる大博打だった。独立企業としては、今では資金の豊富な企業になり、グレイルは遺伝子解析ツールを販売するイルミナの最大顧客のひとつになろうとしている。グレイルの試みが成功するかどうかにかかわらず、ベンチャーキャピタルは資金を提供するだろう。
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