モデルナの新型コロナワクチン、初期臨床試験で「中和抗体」を確認
米国の製薬会社であるモデルナが、自社で開発中の新型コロナウイルス・ワクチンの第1相臨床試験の結果を発表した。 by Neel V. Patel2020.05.20
製薬会社のモデルナ(Moderna)は5月18日、現在実施中の実験的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの第1相臨床試験の中間結果を発表した。初期結果によると、同ワクチンを接種すれば新型コロナウイルス感染症に対する免疫が得られる可能性があるという。
モデルナは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のmRNA(伝令RNA:宿主内でウイルスを増殖させる遺伝的指令を有する物質)を用いて、新型コロナウイルスに対する免疫反応を引き出すよう設計されたワクチンに特化して開発を進めている。同社が用いる新しい手法は、準備を早く進められるが、この手法で開発されたワクチンで販売を承認されたものはまだない。
第1相臨床試験の目的は、試験中の治療薬またはワクチンが安全かどうかを確かめることだ。有効性をテストすることを目的とするものではない。とはいえ、この臨床試験により、治療薬またはワクチンが患者の治療に利用できる可能性についての洞察も得られる。モデルナが3月に開始して現在も進行中の臨床試験は、最大105人を参加者として登録することになっている。各参加者は(約4週間の間隔で)2回に分けて25マイクログラムまたは100マイクログラムの投与を受けるか、あるいは1回で250マイクログラムの投与を受ける。
モデルナは臨床試験に参加した18歳から55歳の8人(そのうち4人は25マイクログラム投与群で、残りの4人は100マイクログラム投与群)の抗体のデータを発表した。同社が発表した結果によると、25マイクログラム投与群の参加者は新型コロナ感染症から回復した患者に見られるのと同程度のレベルの同ウイルスに対する中和抗体を持つようになり、100マイクログラム投与群の参加者は回復患者を「大きく上回る」レベルの中和抗体を持つようになった。副作用が確認されているが、副作用は「一過性であり、自然に解消するものだった」と同社は声明で主張している。
今回の結果は有望だが、これまでのところ参加者8人ぶんのデータしかない第1相臨床試験から結論を導き出すことはできない。はるかに多くのデータが必要だ。米国食品医薬品局(FDA)はすでにモデルナに(患者に対する治療薬の生物学的効果を試験する)第2相臨床試験の実施を許可しており、また、モデルナは第2相臨床試験に50マイクログラム投与群を追加することを発表している。第3相臨床試験は7月に開始する予定だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、モデルナの臨床試験がすべてうまくいけば、FDAは秋までに同ワクチンの緊急使用許可を与える可能性があるという。
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- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。