アマゾンは、ラスベガスで開催されたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)の出展者ではないが、スマート・アシスタント「アレクサ」のおかげで話題を集めた。だが、アマゾンのAI執事がいつまでも王者でいられるとは限らない。
今年のCES関連のニュースに触れると、音声制御による人工知能アシスタントの話題が多いことに気付くはずだ。会話型インターフェイスが2016年に注目すべきテクノロジーになることはMIT Technology Reviewが予測したとおりだ。すでに消費者は飛びついており、企業はできるだけ多くの製品に音声制御を組み込みたがっている。
他社を大幅にリードしているのがアレクサだ。アマゾン純正のアレクサ内蔵スピーカー「エコー」によく似たサードパーティ製スピーカーも作られ、ロボットにも搭載された。家庭を離れ、自動車にも使われようとしているし、スマート冷蔵庫にまで搭載された。
アンドロイド専門メディアのアンドロイド・セントラルが指摘したとおり、今年のCESの活躍により、アレクサはアマゾン製スピーカー「エコー」を超えた存在になったことを示した。画面ではなく、音声で機械を制御できることから、むしろ完全装備のオペレーティング・システムに変わろうとしているのだ。
しかも、アマゾンの立ち位置は特に優れている。ソフトウェアを他の企業に開放し、各社の製品に搭載できるようにしたのだ。実際、アマゾンはアレクサをサードパーティが自社商品に搭載し、アレクサで動作するアプリ(アレクサでは「スキル」と呼ばれる)を作ることを明確に奨励している。
システムが質問に応答するためのあらゆる複雑な機能はクラウドで処理されるため、アレクサは本質的に、どんな古いデバイスにでも簡単に組み込める。枯れた性能のチップセットとマイク、スピーカー、インターネット接続が必要なだけだ。
アレクサはすでに人気者だ。 何百万もの消費者が、アレクサを実際に使ってみて、生活を共にしている。実際、アマゾンが年末商戦前に、エコーを欠品させてしまったほど、消費者の人気が高い。
オープン性と製品への組み込みが簡単なこと、人気が高いことは、どれも先週ラスベガスで非常に多くの製品にアレクサが採用された理由だ。今年のCESの勝利者はアレクサだとニュース解説者がいうのも無理はない。実際そのとおりといっていいだろう。
だが、このままアレクサが君臨し続けるとは限らない。
アマゾンの強みは、出だしが早かったことだ。アマゾンが最初にアレクサ内蔵のスピーカー「エコー」を発売したのは2014年11月。米国各地で正式に発売されたのは2015年だ。一方、グーグルの競合商品「グーグル・ホーム」は、検索エンジンで培ったアシスタントAI執事を採用しているが、まだ他社製品が搭載できるように開放されてはいない。
スマホOSのアンドロイドのように、グーグルがソフトウェアの使用を他社に許可 すれば、アレクサの競合商品としての価値は高まるはずだ。MIT Technology Reviewのトム・サイモナイト記者は以下のように説明している。
アイデアをどう実現するかの競争で、グーグルの優位は圧倒的だ。グーグルは音声アシスタントのテクノロジーを長年研究しており、アマゾンをはるかに上回る額を機械学習分野に投資している。(略)音声アシスタント「アレクサ」を搭載したエコーとグーグル・ホームの比較では、グーグル・ホームは言語理解や質問への応対が極めて優れているという。
アップルが参戦し、SiriをiPhoneとMac以外の、家庭用電子機器にまで拡大するかもしれないという憶測もある。確かに、グーグルと同様、アップルもアマゾンに追いつかなければならない。実際、より優れた製品を提供することで、市場を切り開いた製品に勝てるかもしれない。アレクサは今年のCESの勝者ではあっても、アマゾンがスマート・アシスタント戦争の勝者になったわけではない。
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