あの風邪はCOVID-19だった? 米国初の抗体検査をDIYで実施した男
2月にかかった風邪は新型コロナウイルス感染症だったのか?その疑問の解消を助けたいと考えた元検査技師は、DIY抗体検査を友人らに実施した。 by Antonio Regalado2020.05.20
イアン・ヒルガート=マルティズィスがソーシャルワーカーのアリシア・ロウの腕に注射針を刺すと、ロウは顔を背けて目をぎゅっとつぶった。ヒルガート=マルティズィスは新型コロナウイルスに対する抗体を検査していた。40人の友人と、友人の友人を集めた。中には6人のホームレスの男性もいた。
元検査技師のヒルガート=マルティズィスは検査のやり方を知っていた。新型コロナウイルスに対する抗体を調べる血液検査の精度と抗体検査の実施方法について広範な議論がされていたにもかかわらず、3月にはクレジットカードが使えて知識がある一部の人なら誰でも「研究用」の検査キットをオンライン注文して検査を始めることができた。
ヒルガート=マルティズィスは、「私は自宅で検査をしているだけです。完全な市民科学です」と語る。過去数か月に鼻風邪や発熱を経験したことがあるほとんどの人は、それが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)だったかどうかを知りたいと思っている。
ヒルガート=マルティズィスは4月6日、新型コロナウイルス感染症に関する米国「初の地域血清検査」と題した調査結果を、データと検査方法の説明を添えて投稿した。大規模な医療機関よりも数週間早い結果発表だった。この発表データによると、陽性が1例、陽性が疑われるケースが3例あった。
DIY検査の実施で、ヒルガート=マルティズィスは数日間、抗体検出の最前線に立った。新型コロナウイルスに反応して作られる特殊なタンパク質である抗体が血中で検出されれば、過去に新型コロナウイルスに感染した証拠となる。現在では、血液センターや医療機関が実施する数十件の調査が進行中で、クエスト・ダイアグノスティクス(Quest Diagnostics)が提供するオンラインポータルでは採血の予約を試みることができる。検査注文にはいまだ医師の承認が必要だ。
しかし、わずか1カ月前には、この種の情報を入手するのは困難だった。トランプ大統領の新型コロナウイルスへの対応に対する批判に苛立ったヒルガート=マルティズィスは、メディアで「エコーチェンバー現象」が起きていると感じ、実際のデータで「その空白部分を埋め」ようと考えた。彼はまた、大きな政府および「何の不自由もなく給料を受け取り、経済活動の制限を続けるよう主張している政府関係者」に懐疑的な立場だとも付け加えた。
普段はスポーツ用品チェーンの不動産計画部門に勤務するヒルガート=マルティズィスは今年3月、オレゴン州での入院患者数を予測するためのコンピューター・ダッシュボードを構築した。計画のコピーを上司にメールで送信したが、上司からは会社としては関与したくないと伝えられた。
だが、上司からの回答を受け取る頃には、ヒルガート=マルティズィスはより大きな計画を立てていた。3月には、新型コロナウイルスで特徴的な「スパイク」タンパク質に対する抗体 …
- 人気の記事ランキング
-
- Bringing the lofty ideas of pure math down to earth 崇高な理念を現実へ、 物理学者が学び直して感じた 「数学」を学ぶ意義
- Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 無料イベント「U35イノベーターと考える研究者のキャリア戦略」のご案内
- The 8 worst technology failures of 2024 MITTRが選ぶ、 2024年に「やらかした」 テクノロジー8選
- Google’s new Project Astra could be generative AI’s killer app 世界を驚かせたグーグルの「アストラ」、生成AIのキラーアプリとなるか
- AI’s search for more energy is growing more urgent 生成AIの隠れた代償、激増するデータセンターの環境負荷