新型コロナで露呈した、シリコンバレー流イノベーションの限界
新型コロナウイルス感染症によって、ソフトウェアによって利便性を向上させることに過度に偏った現在のシリコンバレーの限界が見えてきた。経済復活には真に重要な分野でのイノベーションが必要だ。 by David Rotman2020.05.13
マーク・アンドリーセンは、西側諸国が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的流行)への準備と対応に失敗したと断じ、強い不満を表明している。不満の内容は、「幅広い分野において、モノを作る能力がないこと」だ。なぜ、ワクチンや薬、マスク、人工呼吸器さえ手に入らないのか? アンドリーセンは、「これらは、もっと広く手に入るはずなのに、私たちはそれを選択しなかった」と書いている。「もっとはっきり言えば、それらを作るメカニズムや工場、システムを持つことを選択しませんでした。すなわち、作らないことを選んだのです」。
シリコンバレーの象徴であるアンドリーセンが、2011年に発表されて大きな話題となった「ソフトウェアが世界を飲み込む理由」を語った人物であることを一瞬忘れてしまえば、この意見はもっともなように思える。ジョージ・パッカーがアトランティック誌(Atlantic)に書いたように、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、政治や社会で崩壊し衰退しているものの多くを明らかにした。個人用防護具や救急救命用具、医薬品のような私たちが切実に必要としている物資を、作る能力がないというのがその致命的な例だ。
シリコンバレーや大手テック企業は、パンデミックの危機への対応が不十分だ。たしかに、災難を免れた人が働き続けられるようにズーム(Zoom)が提供され、ネットフリックス(Netflix )は私たちの気を紛らわせてくれている。アマゾンは、実店舗に買い物に行きたくない人にとっては救世主だ。アイパッドには注文が殺到し、インスタカート(Instacart)は多くの自宅隔離中の人々を飢え死にさせないよう役立っている。しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、公衆衛生の危機に直面した世界でもっとも裕福な企業であり …
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