ムーアの法則が停滞しており、コンピューター業界は電子ではなく光で計算する方法を開発中だ。現在、ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard)の研究者が開発している非常に高度な光チップを使うと、通常のハードウェアよりも効率的に巡回セールスマン問題等の組合せ最適化問題を処理できるという。
「IEEEスペクトラム(IEEE Spectrum)」(米国の電気工学技術の学会誌)の記事によれば、HPの研究チームは、連携して数字を高速処理する1052個の光学部品を特徴とする計算装置を構築したという。この計算装置は、光に基づいた「イジングマシン」で、温度変動として問題をコード化し、熱の変化によって電子のスピンが時間とともにどのように定着するかを識別することで解を得る。
HP研究所の半導体は、電子の代わりになる光線を偏光させて、2種類の電子スピンを再現する。光線は、小さなヒーターを搭載するチップの周りを激しく揺れ動いて問題を符号化し、答えが出ると、安定した状態になる。IEEEスペクトラムは、この仕組みの技術的な側面を詳細に説明している。研究者は、この手法により複雑な組合せ最適化問題の解を通常のチップよりも速く得られるとしている。
別の光コンピューティングの手法にも同様のメリットがある。MIT Technology Reviewが最近記事にしたように、レーザー光線を使った計算手法によって遺伝的データを分析したり、情報を通常のコンピューターよりも高速に光学的に圧縮したりできる。高速化のほかにも、光ベースのプロセッサーはエネルギー消費も抑えられる。
このようなメリットを考えると、インテルのような半導体大手が、なぜ光コンピューティングハードウェアの構築方法に取り組んでいるのかわかってくる。HP研究所が作ったプロセッサーは、問題解決の軽量化につながる過程の一部なのだ。
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