給付金はデジタル・ドルで? NY州議員ら、公共決済サービスを提案
新型コロナウイルスのパンデミックを受け、米国では国民に現金を支給することが決まった。だが、小切手や銀行振り込みでは支給に時間がかかり漏れが出ることから、デジタル・ウォレットへの支払いを提案する動きもある。 by Mike Orcutt2020.04.23
ニューヨーク州下院議員のロン・キムは、通貨を再設計すべきだと以前から確信していた。新型コロナウイルスのエピデミック(局地的な流行)がニューヨーク州を襲った現在、キム議員はイチかバチかの賭けに出た。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が米国内で蔓延し始める以前から、キム議員は、州による公共デジタル決済システムの構築を推進していた(キム議員はニューヨーク市クイーンズ区の一部を選挙区とする第40区の代表)。キム議員と支持者らは、この構想について、一種の「公共版ベンモ(public Venmo)」だと説明する。人気のピアツーピア(P2P)決済サービス「ベンモ」をもじったのだ。
キム議員の主張は、ニューヨーク州の住民が公共アクセス可能な無料の決済ネットワークを必要としているということだ。なぜ、公共である必要があるのか? クレジットカード会社などの営利目的のデジタル決済プラットフォームは高い取引手数料を請求されることが多く、しかも銀行口座を持たない人を締め出す傾向にあるからだ。さらに営利企業が取引データを収集することで、深刻なプライバシー問題も起きる。
キム議員は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流行)によって、公共アクセス可能なデジタル決済プラットフォームを必要とする理由がさらにはっきりしたという。給付金を必要とする人に対して、政府は従来よりも優れた方法で送金する必要がある。「給付金をデジタル・ウォレットで滞りなく受け取れる方法の導入が、まさに緊急に必要なのです」。
ニューヨーク州に「公共版ベンモ」を導入するアイデアを最初に思いついたのが、コーネル大学のロバート・ホケット教授(法学)とキム議員だ。この概念を説明する学術論文の中で、コンピューター科学のバックグランドも持つホケット教授は、過去10年間に出現した新しい金融テクノロジーによって、P2P決済プラットフォームの構築は「単純明快な提案」になったと主張する。
昨年の秋、キム議員、ホケット教授、ニューヨーク州上院議員のジュリア・サラザールは、正式名に「包括的価値台帳(Inclusive Value Ledger)」と名づけたプラットフォームの法制化に取り組むと発表した(サラザール議員はニューヨーク市ブルックリン区のほとんどを選挙区 …
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